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ノルマと目標:その本質と違いについて考える

ビジネスパーソンであれば、「ノルマ」という言葉を使ったことが一度はあるのではないでしょうか。この言葉は職場で頻繁に使われていますが、実際にはどこか重苦しい響きを持っています。また、私は海外で「ノルマ」という言葉を使ったこともなければ、聞いたこともありません。そして、よくよく考えれば「ノルマ」は英語でも無さそうです。

「ノルマ」の語源と歴史

「ノルマ」の語源を調べてみると、驚くべきことにこの言葉はロシア語に由来するものであることが分かります。Wikipediaによれば、「ノルマ」とはソ連時代に労働者に課せられた標準作業量を指します。この言葉が日本に伝わった背景には、第2次世界大戦後の歴史があります。

ソ連軍によって日本軍捕虜約64万人がシベリアなどソ連領地内へ強制連行され、強制収容所で過酷な労働を強いられた過去があります。その抑留者たちがロシア語の「ノルマ」という概念を日本に持ち帰ったのです。このような歴史を背景に、「ノルマ」という言葉には重く暗いイメージがつきまとっています。

ノルマと目標の本質的な違い

「ノルマ」と「目標」は一見似ているようですが、その性質は大きく異なります。この違いを理解することで、組織運営や個人の成長に役立つ洞察が得られるでしょう。

ノルマの特徴

  • 上から一方的に与えられる
  • 受動的で、達成できなければ制裁を伴う
  • プレッシャーが強い

目標の特徴

  • 自ら主体的に設定する、もしくは納得して受け入れる
  • ワクワクしながら達成に向かう
  • 成長や自己実現の手段となる

「目標」が「ノルマ」に変わる危険性

多くの企業では、当初「目標」として設定されたものが、いつの間にか「ノルマ」として扱われてしまうケースが見受けられます。例えば、営業部門での売上目標が達成できなかった場合に厳しいペナルティが課されるといった状況です。このような運用では、目標の本来持つポジティブな意味が失われ、従業員にとって重荷になりがちです。

ドラッカーの「目標設定と自制心による経営」

ドラッカーは『Management by Objectives and Self-Control(目標設定と自制心による経営)』という概念を提唱しました。彼の主張の核心は、個人が自らの目標を設定し、それに向けて主体的に行動することにあります。この考え方は、従業員が内発的な動機づけを持ちながら働ける環境を作ることの重要性を示しています。

管理職の役割再定義

昨今、「管理職になりたくない」という若者が増えていると言われています。その背景には、管理職が「ノルマを課す役割」として捉えられていることがあるのではないでしょうか。

しかし、管理職の本質的な役割は「目標達成をサポートするリーダー」であるべきです。部下が主体的に行動できるように促し、彼らの成長を支える存在になることで、管理職はより魅力的で意義のある役職となるでしょう。

「管理職」という翻訳の問題

ちなみに、「Manager」を「管理職」と翻訳したこと自体が、日本における誤解の一因と考えられます。「管理」という言葉には、どこか上からの押し付けを感じさせるニュアンスがあります。しかし、マネージャーの本質は「人を導き、チームを目標達成に向かわせる存在」であり、単なる「管理者」ではありません。

目標設定で組織を活性化する方法

では、どのようにすれば「目標」を正しく運用できるのでしょうか。そのためのポイントを以下に挙げます。

  1. 明確なビジョンの共有
    • 組織全体で共通のビジョンを持つことで、目標が個人にとって意義あるものとなります。
  2. メンバーの意見を反映
    • 目標設定にメンバーを巻き込み、自発的な行動を促します。
  3. 達成プロセスの評価
    • 結果だけでなく、努力や工夫を評価することで、従業員のモチベーションを高めます。
  4. 建設的なフィードバックの提供
    • 適切なタイミングでのフィードバックにより、次の行動への道筋を示します。

結論

「ノルマ」と「目標」の違いを理解し、適切に運用することで、組織全体のパフォーマンスを向上させることができます。ノルマではなく、目標を軸にした働き方を取り入れることで、従業員が自発的に行動し、ワクワクしながら仕事に取り組める環境を作りましょう。

目標設定を通じて、より良い職場文化と成果を生み出すことができると信じています。

Tetsuro

Tetsuro

株式会社 2E Consulting 代表。中小企業診断士。アメリカ合衆国ニューヨーク州出身。一橋大学社会学部卒。三菱商事にて製鉄用石炭・鉄鉱石のトレーディング・事業開発・投資事業に携わり、インド・ドイツ・シンガポールに9年間駐在。海外駐在において現地人材の育成・組織開発に携わる中で人材育成に興味を持ち、企業向け研修会社に転職、年間2,000人の受講生にビジネススキルを教える。Harvard Business School Program for Leadership Development 修了(2019年)。その後、独立し、中小企業診断士として数多くの企業経営の現場で経営改善に従事している。

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