名選手が育つ組織には、名マネージャーがいる
―意識を変えれば、組織は変わる。ビリー・マーチンに学ぶ管理職育成の本質―
「名選手、名監督にあらず」――
これはスポーツの世界ではよく知られた言葉です。現役時代に華々しい成績を残したアスリートが、指導者としては成果を出せないことが少なくありません。
その一方で、こうした“常識”を打ち破った人物がいます。1950〜61年にかけて名門ニューヨーク・ヤンキースでプレーしたビリー・マーチンです。
彼は選手としてだけでなく、監督としても数々の実績を残し、ヤンキースの背番号「1」は永久欠番に指定されています。
なぜ彼は「名選手、名監督にあらず」という言葉の壁を超えることができたのでしょうか。
そのヒントが、広岡達朗氏の著書『意識革命のすすめ』(1983年/昭和58年)に記されています。
「選手と監督は、まったく別の職種だから」
ビリー・マーチンは、次のような言葉を残しています。
「選手時代にしみこんだ意識を、きれいさっぱりに払拭して、一から勉強することだ。監督業にとっては、選手時代の実績なんか無関係。選手と監督は、まったく別の職種だから。」
私はこの言葉に、非常に大きな示唆を感じました。
というのも、ビジネスの世界にも、まったく同じ構造があるからです。
現場で成果を出し、周囲からの信頼も厚かった「名プレーヤー」が、管理職に昇進した途端に悩み始める。
部下をどう導いていいかわからない、自分ばかりが頑張ってしまいチームがついてこない。そうした声を、私は研修やコーチングの現場で何度も耳にしてきました。
それもそのはず。「プレーヤー」と「マネージャー」は、必要とされる思考もスキルも、まったく別物だからです。
高校時代の剣道部の大先輩が教えてくれたこと
実はこの『意識革命のすすめ』という本、私にとっては特別な一冊です。
高校時代の剣道部の大先輩と久々にお酒を酌み交わした際に、こう言われたのです。
「高校時代に読んで、すごく感銘を受けた本があるんだ。意識を変えることの大切さを教えてくれた一冊でね。」
それがこの本でした。読んでみると、40年以上前の本とは思えないほど、本質を突いた内容でした。
当時のメジャーリーグの選手たちが、いかに論理的にトレーニングし、プロフェッショナルとしての誇りを持ってプレーしていたか。
そして、それを支える監督やコーチたちの合理的かつ人間味あるマネジメント――。
日本ではまだ根性論が根強かった時代に、すでにこうした“意識のアップデート”がアメリカでは始まっていたのだと、驚かされました。
管理職に必要な「3つの力」とは?
私が代表を務める 2E Consulting では、管理職に求められる能力を以下の3つに整理しています。
自己基盤力:自分自身の価値観や管理職としての“目的”を明確にし、それを支える自信や覚悟
課題解決力:組織や部下の課題を的確に捉え、目的に向けて論理的に施策を組み立てる思考力
他者影響力:部下や周囲に働きかけ、信頼関係を築きながら人と組織を動かす力(リーダーシップ)
プレーヤーとして優秀だった人ほど、「課題解決力」に偏りがちです。
しかし、マネージャーとして成果を出すには、自分自身の“軸”を持つ【自己基盤力】と、部下の心を動かす【他者影響力】が欠かせません。
まさに、ビリー・マーチンの言葉が指していたのは、この「違う職種=違う力が求められる」という構造なのです。
大谷翔平が育った背景にある「指導者たち」
ご存じ、大谷翔平選手。二刀流でメジャーリーグを席巻し、世界に衝撃を与え続ける存在です。
彼のようなプレーヤーは、まさに“異次元”の領域に達しています。
しかし、彼がそこまで育ったのは、本人の努力や才能だけではありません。
花巻東高校時代の佐々木洋監督をはじめ、プロ入り前後の指導者、そして日本ハム時代の栗山英樹監督など、彼を信じて伸ばした“名マネージャー”の存在があってこそです。
彼らは単に技術を教えたのではありません。
大谷選手の個性を理解し、可能性を信じ、自己決定を尊重しながらも成長を促す――まさに「他者影響力」の高いリーダーたちでした。
管理職を育てれば、名選手が育つ。組織が変わる。
ここで、大切な問いが生まれます。
私たちの会社には、大谷翔平のような名選手を育てる“名マネージャー”がいるだろうか?
プレーヤーの力を信じて育てる、そんな管理職が、今の組織にどれほどいるだろうか?
名選手が育つ組織には、必ず名マネージャーがいます。
管理職の育成を後回しにする限り、組織の未来を担うプレーヤーも育ちません。
「管理職=罰ゲーム」などと言われる時代だからこそ、彼らの役割を再定義し、真に育てることが求められています。
終わりに:意識が変われば、組織も変わる
組織を変えるには、人を変えること。
人を変えるには、まず“意識”を変えること。
名選手としての意識を捨て、ゼロから学び直す覚悟。
ビリー・マーチンの言葉に込められたその精神は、今まさに私たちの組織に求められているものです。
2E Consultingでは、管理職の“意識革命”を支えるプログラムを、3つの力に基づいて設計しています。
管理職が変われば、部下が育ち、組織が生まれ変わる。
そんな未来を、本気で一緒に目指していきたいと考えています。
追伸:
弊社の管理職育成プログラムに関心をお持ちいただけた方は、ぜひお気軽にご相談ください。
“名選手を育てるマネージャー”を組織に増やす。その第一歩をご一緒できれば幸いです。
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