「マネジメント=管理」だと思っていませんか。
あるいは、「マネジメント=人材育成」でしょうか。
どちらも間違いではありません。
しかし、どちらも“全体”ではありません。
私たちが管理職研修の現場で必ず最初に行うのは、スキルの説明ではなく、たった一つの問いです。
「あなたにとって、マネジメントとは何ですか?」
この問いに即答できる管理職は、実は多くありません。
経営の現場で起こる混乱の多くは、能力不足ではなく、
言葉の定義の曖昧さから生まれています。
定義が曖昧なまま努力すれば、努力の方向がズレる。
方向がズレれば、成果もズレる。
マネジメントの出発点は、スキルではなく「定義」です。
(▶ マネジメントの全体像から整理したい方は
「マネジメントとは何か──『管理』だと思っている限り、組織は弱くなる」
https://2econsulting.co.jp/management1/ )
■ 定義が違えば、行動が変わる
「マネジメントとは人材育成である」と定義した人は、自然と育成に時間を使います。
- 面談を重視する
- フィードバックを丁寧に行う
- 部下の成長を最優先にする
一方で、「マネジメントとは管理である」と捉えた人は、
- 進捗確認に時間をかける
- 数値管理を徹底する
- ルール遵守や効率性を重視する
どちらも一面では正しい。
しかし、その“定義”が日々の判断を決め、やがて成果の形を決めていきます。
管理職研修でよく起きるのは、
「自分では育成重視のつもりなのに、部下からは管理型だと言われる」
というズレです。
それは人格の問題ではありません。
定義が曖昧で、行動に一貫性がないだけです。
(▶ 定義が行動を決める構造について詳しくは
「『言葉の定義』の重要性」
https://2econsulting.co.jp/importance-of-definition/ )
■ 定義がないと、判断は揺らぐ
では、そもそも定義を持っていない場合はどうなるか。
人はその時のプレッシャーに反応します。
- 上司の顔色
- 外部からの圧力
- 短期の数字
- 周囲の空気
その都度、判断基準が変わります。
昨日は「挑戦しろ」と言っていたのに、今日は「リスクは取るな」と言う。
結果として、
- 「軸が見えない上司」
- 「言っていることが変わる管理職」
という評価につながります。
さらに厄介なのは、“誤った定義”のまま努力しているケースです。
例えば、
「マネジメントとは部下に好かれることだ」
という定義を無意識に持っていると、
- 厳しい指摘を避ける
- 衝突を避ける
- 問題を先送りする
その結果、チームの基準が下がります。
努力しているのに、成果が出ない。
これは意欲の問題ではなく、定義の問題です。
■ 定義は「思考の起点」である
ピーター・ドラッカーは、マネジメントを「組織の成果を上げるための機能」と整理しました。
重要なのは“成果”という目的です。
しかしここで忘れてはならないのが、成果は短期だけではないということです。
(▶ 「長期的」とはどれくらいか?未来責任という視点
https://2econsulting.co.jp/management4/ )
定義とは、目的を明確にする行為です。
- 自分は何を重視しているのか
- 何のためにマネジメントをしているのか
- どの時間軸で成果を考えているのか
これを言語化できていれば、判断は一貫します。
逆に、定義が曖昧なままでは、どんな理論を学んでも迷い続けます。
管理職研修で知識をインプットしても、現場で活きない理由の多くはここにあります。
知識が足りないのではない。
定義が定まっていないのです。
■ 実例:定義を変えた部長
ある製造業の部長は、長年「管理とは統制である」と考えていました。
- 細かなチェック
- 頻繁な修正指示
- 報告の徹底
彼は真面目でした。努力もしていました。
しかし現場は疲弊していました。
離職が増え、会議では発言が減り、挑戦がなくなっていた。
これは、まさに「関係の質」が下がっていた状態です。
(▶ 成果は「関係の質」から生まれる
https://2econsulting.co.jp/management3/ )
そこで彼は管理職研修の中で問い直しました。
「管理とは何か?」
そして定義をこう変えました。
「管理とは、成果を出せる状態を整えること。」
この言葉に変えた瞬間、行動が変わりました。
- 指示は減った
- 対話が増えた
- 任せる範囲が広がった
- 問いかけが増えた
半年後、離職率は低下し、生産性は向上。
行動を変えたのはスキルではありません。
定義でした。
■ マネージャーの役割再定義
マネージャーは、場当たり的に判断する人ではありません。
自分の定義に基づいて、一貫した意思決定をする人です。
その定義が、
- 短期成果重視なのか
- 長期育成重視なのか
- 組織全体最適なのか
によって、チームの未来は変わります。
マネージャーは単なる「管理職」ではありません。
(▶ 管理職は「監督」である
https://2econsulting.co.jp/what_is_a_manager/ )
さらに言えば、
(▶ 管理職は「経営職」である
https://2econsulting.co.jp/what-is-a-manager2/ )
定義を持つことは、羅針盤を持つことです。
嵐の中でも、進む方向を見失わない。
管理職研修で本当に身につけるべきなのは、テクニックではなくこの羅針盤です。
■ 「定義なき努力」が最も危険
多くの管理職は努力しています。
- 本を読む
- セミナーに参加する
- 部下と面談する
しかし、その努力が成果につながらないケースがあります。
なぜか。
定義が曖昧だからです。
例えば、
「部下の自主性を伸ばしたい」と言いながら、
無意識では「失敗させたくない」と思っている。
この内的矛盾が、行動をブレさせます。
- 任せると言いながら口を出す
- 挑戦を促しながらリスクを制限する
部下は混乱します。
一貫性のないマネジメントは、信頼を失います。
(▶ 「関係の質」とは何か?
https://2econsulting.co.jp/qualityofrelation/ )
■ あなたのマネジメントの定義は?
ここで問いです。
あなたは「マネジメントとは何か」と問われたら、一文で答えられますか。
- 理想のリーダー像は何か
- 譲れない価値観は何か
- 長期で守りたい成果は何か
これを言語化することが、あなたのスタイルを決めます。
正解はありません。
しかし、定義がない状態は最も危険です。
🔍 今日からできるチェック
- 自分のマネジメントの定義を一文で言えるか
- その定義は長期成果につながっているか
- 日々の判断はその定義と一致しているか
- 部下にその定義を説明できるか
答えに迷うなら、まだ定義は固まっていません。
■ 定義が行動を導き、成果を変える
言葉は抽象です。
しかし、抽象が具体を決めます。
定義
→ 思考
→ 行動
→ 成果
この流れは変わりません。
管理職研修で学ぶべき最初のテーマは、テクニックではなく「自分の定義」です。
そしてマネジメントの全体像を体系的に理解するには、
(▶ 誤解から学ぶ「マネジメント」の本質
https://2econsulting.co.jp/misunderstanding-of-management/ )
もあわせて読むことをおすすめします。
マネジメントの出発点は、知識ではなく定義。
あなたの言葉が、あなたの行動を決め、
やがて組織の未来を決めていきます。
だからこそ、まず問うべきなのです。
あなたのマネジメントは、何を目的にしているのか。
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