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管理職の“評価スキル”アップ! 効果的な評価者研修とは

社員の「評価」は、管理職がもっとも嫌がる仕事の一つではないでしょうか。
「せっかく頑張ってくれた部下に〇×をつけるのは忍びない」「悪い評価を付けて、部下に嫌われたくない」…そう思って、ついつい甘く評価をして、結果としてほぼ横並びになったり、悪い評価をつけたとしても、その評価の説明責任から目を背けてしまったりするケースが多々あります。
評価制度を適切に回すのは、経営者や人事の方々にとって最重要の課題にも関わらず、上記のような管理職が多く、せっかく評価制度を作っても形骸化している会社が多いのが実態です。
そうなると、「評価者研修をやろう」となるのですが、通り一遍の「評価者研修」を導入しても、「研修をやった」という実績が残るだけで、全く効果が出ないことになりかねません。
そこで、今回は「効果の上がる評価者研修」の設計についてお伝えできればと思います。


社員の「評価」が苦痛になる理由

「評価」の目的を、「〇×をつけるため」「給与を決めるため」「昇進の際の材料にするため」と捉えている管理職が非常に多いです。
私自身も、かつて総合商社で評価者になった時、「頑張ってくれている部下に〇×をつけるのは申し訳ない」「そもそも、自分にそんな資格があるのだろうか」などと考えて、評価そのものが非常に苦痛だったことを思い出します。

評価を「〇×をつけて社員の給与や昇進を決めるために行うもの」と捉えると、社員や組織の未来が見えなくなってしまいます。そうなると「社員のため」「組織のため」の評価であるはずの本来の目的が見失われてしまい、評価が「やりたくない気が重い」仕事になってしまいます。


動機づけの種類「外発的動機付け」「内発的動機付け」

さて、多くのサラリーマンはゴルフが大好きです。一円の得にもならないのに、スコアを少しでもよくするために、高いレッスン代を払ってレッスンプロに習い、ゴルフクラブを買い替え、仕事帰りに打ちっぱなしに行くわけです。
ゴルフではなくても、ランニング、プラモデル、ヨガ…多くの人は、趣味に没頭し、多くの時間とお金を費やします。
よくよく考えれば、不思議なことではありませんか? また、趣味に没頭するように、仕事に没頭できないのはなぜなのでしょうか?

1970年代にエドワード・デシという心理学者が行った、ある興味深い実験があります。学生を2つのグループに分けて、それぞれのグループに「ソノマ・パズル」という、知的好奇心を刺激するパズルをやらせます。
1つ目のチームは
このパズルを解けたら1ドルの報酬を与える。
2つ目のチームは
特に報酬を与えない。
30分間、試験監督の下でパズルを解かせます。その後30分間、試験官は退出します。
試験官が退出した後の30分間で、真面目にパズルに取り組み、結果が良かったチームはどちらになったでしょうか?

当時の常識では、金銭的な報酬がモチベーションに繋がると考えられており、一つ目の報酬を与えられたチームがより成果を上げたと考えるのが普通でした。
しかし、結果は予想を裏切るもので、報酬を与えられていないチームの方が、試験官退出後も真面目にパズルに取り組み、成績が良かったのです。
ここから示唆されることは以下です。

1. 動機付けには、金銭のように、外から与えられる外発的動機付けと、「純粋に面白いから行う」という内発的動機付けがある。
2. 長期的にモチベーションを高める動機付けは、内発的動機付けである。
3. 内発的動機付けがある状態で外発的動機付けを行うと、内発的動機付けを弱めることになる。

子育てに例えると理解しやすいかと思います。
子供がお母さんの役に立とうとお皿洗いを自発的に行います。喜んだお母さんは、お皿洗いのたびに子供にお小遣いを与えます。その後、子供が中学校になったのをきっかけにお小遣いを与えることをやめます。すると、子供は、モチベーションを失って、皿洗いをしなくなります。
「お母さんの役に立ちたい」という内発的動機付けが、「お小遣いをもらう」という外発的動機付けにすり替わってしまったために、お小遣いという「外発的動機付け」がなくなったとたんにやる気を失ってしまったのです。

多くのサラリーマンがゴルフに熱中する理由は、まさにここにあります。ゴルフなどの多くの人たちが熱中できる趣味には内発的動機付けを刺激する様々な仕掛けがあるために熱中できるのです。


部下の管理は「飴と鞭」ではなく「モチベーション」

皆さんは、MBO(Management by Objectives:目標管理制度)をご存じでしょうか。
「期初に目標を具体的に設定し、その評価の達成度を客観的に図ることで、評価者が部下を管理ための制度」
この定義に違和感を持つ方はいるでしょうか。実は、上の定義は、MBOに対する典型的な誤解から生じている間違った定義なのです。

MBOを提唱したのは、かの有名はピーター・ドラッカーですが、彼はMBOを「Management by Objectives and Self-Control(自制)」と述べています。つまり、正確には「MBO-S」なのです。Self-Controlの主語は誰かというと、評価者ではなく部下自身なのです。
つまり、MBOを正しく定義すると、
「部下自身が主体的に期初の目標を設定し、自分自身を律することで、目標達成を管理していく制度」と、主語が評価者ではなく、部下になるのです。

前者の誤った定義は、成果主義の導入と共に、広く日本に流布してしまいました。
前者の仕事観は、「仕事とは、つまらないもの、やらされるもの。だから、上司が部下を管理しないと、部下はさぼる。部下の管理は【飴と鞭】で管理していく」というものです。
一方で、後者の仕事観は、「仕事とは、本来楽しくやりがいのあるもの。だから、部下がモチベーション高く仕事をしてもらう環境づくりが上司の役割。【飴と鞭】ではなく【モチベーション】によって部下を管理していく」というものです。


評価の目的とは

世界最大の人材サービス会社、Randstad社が20年間にわたり行っている大変興味深いモニター調査があります。世界の34の市場、18‐67歳の3万5000人の労働者に調査しているものです。
この調査によると、世界では57%の人が「仕事はやりがいを与えてくれる」と感じているのに対し、日本人は38%の人しかやりがいを感じていないといいます。その他、この調査からは「日本人は、雇用主の目標や価値観が一致している割合が低い」「仕事が人生において重要なものだという認識が低い」など、日本人には「仕事を人生の重要な一部だと位置づけて、人生の目標を主体的に達成するために働く」という意識が低いことが見て取れます。

日本人の一人当たりの所得や生産性は、もはや先進国と言えないまでに低下しています。より主体的に仕事を創造していくことが求められる現代において、日本が低迷している原因の一つに、こうした「仕事はやらされるもの」という仕事観にあるのではと私は考えています。
以上から、評価の主な目的とは、以下になります。

1. 内発的動機付けを促進し、部下が主体的に仕事に取組めるようにする
2. 部下の成長を後押しして、部下の目標達成を支援する
3. 部下の成長と目標達成を通じて、組織の目標を達成する

もちろん、給与を公平に割り振ることや、昇進の材料にすることも大事です。しかし、そこを評価の最終的な目的に据えてしまうと、「飴と鞭による管理」が発動してしまい、部下と組織のパフォーマンスを最大化させることができず、結果として組織の目標達成も出来なくなってしまいます。


効果的な評価者研修のために

評価者研修では、以上のように、そもそもの「評価」の目的を理解させることが重要になります。その上で、部下がモチベーション高く主体的に仕事に取り組むためのポイントを、「目標設定」「進捗フォロー」「評価」の3つのプロセスごとに学んでいきます。

ただし、多くの管理職は不安を抱えながら試行錯誤して日々過ごしています。そういう管理職に、一方的に理想論を押し付けても「綺麗ごとばかり言うな!」と反発を招いてしまいます。受講生が自分事として研修を受講してもらうために、研修の要所要所で、受講生同士がディスカッションしながら悩みを共有する機会を設け、講師がそれぞれの悩みに寄り添いながら、適切にアドバイスをしていくことが必要です。

そして、最も大事なことは、「研修を研修のままやりっぱなしにさせない」ということです。評価者研修を受講し、実際に部下と向き合い悩み苦しんだ後に、再度振り返りのフォロー研修を行い、そこで受講者の悩みを吸い上げ、受講者同士のディスカッションや講師からのアドバイスを行うことで、学んだことを実践させる仕組み作りを行うことで、研修での学びを実践まで結びつけることができます。

また経営や人事の観点では、フォロー研修から出てくる受講生の悩みや相談は、自社が抱える大きな経営課題を理解するうえで、大いに役立つ情報になるでしょう。
評価者研修を外部講師に任せる際は、受講生の悩みに寄り添いながらも適切なアドバイスができるスキルと人間性を併せ持った講師に依頼することが大切です。

当社では、「管理職としての心の在り方」や「部下との向き合い方」などのマインド面から、問題解決や組織マネジメントなどのスキル面まで包括的に身に着けさせる実践型リーダー育成プログラム「ビジネス地頭力養成講座」を展開しています。ご興味のある経営者・人材育成担当者の方がおりましたら、お気軽にお問合せください。

Tetsuro

Tetsuro

株式会社 2E Consulting 代表。中小企業診断士。アメリカ合衆国ニューヨーク州出身。一橋大学社会学部卒。三菱商事にて製鉄用石炭・鉄鉱石のトレーディング・事業開発・投資事業に携わり、インド・ドイツ・シンガポールに9年間駐在。海外駐在において現地人材の育成・組織開発に携わる中で人材育成に興味を持ち、企業向け研修会社に転職、年間2,000人の受講生にビジネススキルを教える。Harvard Business School Program for Leadership Development 修了(2019年)。その後、独立し、中小企業診断士として数多くの企業経営の現場で経営改善に従事している。

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