「成果を出せ!」
強く言えば言うほど、なぜか成果が出なくなる。
これは、多くの現場で繰り返されている
マネジメントの逆説です。
売上目標を掲げる。
KPIを細かく管理する。
未達成者を詰める。
一見、合理的に見える。
しかし現実には、
- 会議の空気が重くなる
- 発言が減る
- 挑戦がなくなる
- 離職が増える
そして、肝心の成果が伸び悩む。
なぜこんなことが起きるのでしょうか。
その構造を明快に示したのが、MITのダニエル・キム教授が提唱した
成功循環モデル(Success Cycle)です。
■ 成功循環モデルとは何か
キム教授は、組織の成果は次の順番で生まれると示しました。
① 関係の質(Quality of Relationships)
→ ② 思考の質(Quality of Thinking)
→ ③ 行動の質(Quality of Actions)
→ ④ 成果の質(Quality of Results)
重要なのは、
成果は出発点ではなく、終点である
という点です。
多くのマネジャーは、成果を起点にします。
- 「売上を上げろ」
- 「利益を出せ」
- 「目標を達成しろ」
しかし成果は、直接コントロールできるものではありません。
成果は「結果」であって、「原因」ではない。
ここを取り違えると、マネジメントは悪循環に入ります。
■ なぜ成果を追うと悪循環が起きるのか
成果を強く求めると、まず何が起きるか。
関係の質が下がります。
上司が詰める。
部下は防衛する。
会議が「報告と弁明の場」になる。
心理的に追い詰められた状態では、人は創造的思考を選びません。
- 「どうすれば挑戦できるか」ではなく
- 「どうすれば怒られないか」
へと意識が向きます。
この瞬間、思考の幅が狭くなる。
思考が狭まれば、行動も縮こまります。
- 指示待ち
- 忖度
- 報連相の滞り
- 挑戦の回避
そして結果として、成果が下がる。
これが悪循環です。
数字を追えば追うほど、数字が逃げる。
それは能力不足ではありません。
構造の問題です。
■ 人は「関係」によって思考が変わる
では、なぜ関係の質が出発点なのか。
人間は社会的存在だからです。
信頼できる関係の中では、人は安心して考えることができます。
- 失敗を共有できる
- 助けを求められる
- 異論を言える
この環境では、思考の質が上がります。
「どうせ無理」から
「どうすればできるか」へ。
前向きな問いが生まれます。
思考が変われば、行動が変わる。
- 自発性が生まれる
- 挑戦が増える
- 改善が積み重なる
そして結果として、成果が上がる。
成功循環の核心はここにあります。
■ 「なぜできないんだ」が生むもの
たとえば、上司がこう言う。
「なぜできないんだ」
その瞬間、部下の頭の中では何が起きているでしょうか。
- 怒られない方法を探す
- 言い訳を準備する
- 責任を回避する
創造性は消え、防衛本能が前面に出ます。
これは能力の問題ではありません。
環境の問題です。
組織論の古典であるバーナードは、「協働意欲」が組織の成立条件だと述べました。
協働意欲がなければ、組織は動きません。
関係の質が崩れると、協働意欲が失われる。
その結果、成果も失われる。
■ 実例:数字詰めをやめた営業チーム
あるメーカーの営業チームでは、
毎週の会議が「数字詰め」でした。
未達成者が理由を説明し、
上司が改善策を指示する。
雰囲気は重く、発言は減り、
成果も伸び悩んでいました。
そこで会議の構造を変えました。
まず冒頭に、
「今週うまくいったこと」
を共有する時間を設けたのです。
小さな成功でもいい。
挑戦でもいい。
最初は半信半疑でした。
しかし徐々に、
- 成功事例が共有され
- 横展開が進み
- 前向きなアイデアが生まれ
空気が変わっていきました。
半年後、売上は15%向上。
数字を直接追うのをやめたことで、
数字が上がった。
これが成功循環です。
■ マネージャーの役割転換
ここで重要なのは、役割の再定義です。
マネージャーは、
「成果を出させる人」ではない。
成果が出る環境を整える人である。
人を直接動かそうとするほど、反発が生まれます。
しかし環境を整えれば、人は自ら動きます。
信頼。
対話。
心理的安全性。
これらは「ふわっとした概念」ではありません。
成果の先行指標です。
数字は遅れて現れます。
しかし関係の質は、今すぐ変えられます。
■ 関係の質を高める3つのヒント
では、何から始めればよいのか。
1️⃣ 相手を「変えよう」としない
人は操作されることを嫌います。
「どうすれば動くか」ではなく
「どうすれば話せるか」を考える。
まずは対話が成立する土壌を整える。
2️⃣ 背景の“意図”を聴く
表面の言葉の奥には、必ず意図があります。
- なぜそう考えたのか?
- 何を守ろうとしているのか?
理解されたと感じた瞬間、人は心を開きます。
3️⃣ 感謝を習慣にする
感謝は心理的安全性の最小単位です。
「ありがとう」と言える関係は強い。
感謝は空気を変えます。
空気が変われば、思考が変わります。
■ 成果は「遅行指標」、関係は「先行指標」
多くの組織は、遅行指標ばかりを追いかけます。
売上。
利益。
KPI。
しかしそれらはすべて結果です。
本当に見るべきは、
- 会議で意見が出ているか
- 異論が歓迎されているか
- 失敗が共有されているか
- 助けを求められているか
これらこそが、成果の前兆です。
短期の数字ではなく、
長期の信頼を積み上げる。
それが、成果を生み続けるマネジメントの真髄です。
🔍 今日からできるチェック
- メンバーの意見にまず「ありがとう」と言えているか?
- 会議で発言しやすい空気があるか?
- 失敗を共有できる文化があるか?
- 上司が最も多く話していないか?
これらが「はい」なら、
あなたのチームには成功循環が流れ始めています。
■ まとめ
- 成果は「関係の質」から始まる
- 成果を直接追うと悪循環が起きる
- 関係が整えば思考が変わり、行動が変わる
- マネージャーの役割は「環境整備者」である
- 数字は遅行指標、関係は先行指標
数字を追うほど、数字は逃げる。
しかし関係を整えれば、
数字は後からついてくる。
それが、
持続的に成果を生み続ける組織の構造です。
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