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モチベーションは「上げるもの」ではない

―管理職研修で解き明かす、1on1における内発的エネルギーの本質

「部下のモチベーションをどう上げればいいでしょうか?」

これは、管理職研修の現場で最も頻繁に出る質問の一つです。

・部下が動かない
・挑戦しない
・主体性が見えない

そう感じたとき、多くの上司はこう考えます。

「もっと励まさなければ」
「もっと褒めなければ」
「時には喝も必要かもしれない」

しかし、ここに大きな誤解があります。

モチベーションは、“上げるもの”ではありません。
湧き出すものです。

この視点を持つだけで、1on1の質は大きく変わります。


なぜ「上げる」発想では続かないのか

管理職研修ではまず、
外発動機づけと内発動機づけの違いを整理します。

外発動機づけとは

・褒める
・励ます
・評価する
・報酬を与える
・叱責する

これらはすべて「外側からの刺激」です。

もちろん、外発動機づけが悪いわけではありません。
短期的には効果があります。

しかし、必ず次の現象が起こります。

人は刺激に慣れる。

最初は強く響いた言葉も、
回数を重ねると効力が落ちます。

報酬も同じです。
一度基準が上がると、それが当たり前になります。

つまり、外発動機づけには
「効果の天井」があるのです。

この構造は、
1on1がうまくいかない本当の理由
でも触れた通り、
テクニック中心の管理職研修が限界を迎える理由とも重なります。


部下は本当に「やる気がない」のか

部下が動かないとき、上司は「やる気がない」と判断しがちです。

しかし1on1で丁寧に話を聴くと、多くの場合、原因は別にあります。

・変わるのが怖い
・失敗したくない
・評価を下げたくない
・どう動けばよいか分からない
・自信がない

これは「やる気がない」のではありません。
ブレーキがかかっている状態です。

このブレーキの正体は何か。

それは、
ホメオスタシス(現状維持本能)」です。

人は本能的に、現状を守ろうとします。
変化は、脳にとってリスクだからです。

ブレーキがかかった車に、
アクセルを踏み込んでも進みません。

励ましも、喝も、評価も、
すべてアクセルです。

しかし必要なのは、
ブレーキを外すこと。

ここに、1on1の本質があります。


内発的モチベーションとは何か

人が自ら動き出すとき、そこには共通点があります。

・やってみたい
・面白そうだ
・挑戦してみたい

この“内側からのエネルギー”を
内発的動機づけと呼びます。

内発的モチベーションの特徴は3つ。

  1. 持続する
  2. 強い
  3. 他者に依存しない

だからこそ、管理職研修では
「どう押すか」ではなく、
どう引き出すかを扱います。

この構造は、
コンフォートゾーンとWill×Can×Must
の記事でも詳しく解説していますが、
人はWillが立ち上がったときに初めて、未来へ踏み出します。


1on1の役割は「燃やす」ことではない

多くの上司が誤解しています。

上司の役割は、部下を燃やすことではありません。

大切なのは、
部下の中にある火種を見つけること。

火種があると、

・できそうだ(Can)
・意味がある(Must)

が後から育ちます。

しかし火種がないまま、
「やれ」「頑張れ」と言われても続きません。

だからこそ1on1は、
“やらせる時間”ではなく、
“見つける時間”なのです。


管理職研修で扱う「Will・Can・Must」の構造

私たちの管理職研修では、
モチベーションを3軸で整理します。

● Will(やりたい)
● Can(できそう)
● Must(意味づけ)

多くの企業では、Mustから入ります。

「会社として必要だ」
「やるべきだ」

しかし、Willがゼロの状態では、Mustは重荷になります。

まずはWillを見つけること。

このWillは、
自己肯定感と自己効力感
という心理的土台の上に立ち上がります。

だからこそ、
1on1は評価面談とはまったく別物なのです。


1on1でWillを引き出す具体質問

では実務で何をすればよいのか。

難しいことは必要ありません。

次の問いを使ってみてください。

・「最近、少しでも楽しいと思った仕事は?」
・「時間を忘れて取り組めたことは?」
・「うまくいったと感じた瞬間は?」

ポイントは、
大きな夢を聞かないこと。

「将来どうなりたい?」という問いは抽象度が高すぎます。

Willは、小さな“いいな”から始まります。

その断片を丁寧に拾うこと。

そのときに必要なのが、
傾聴」と
承認」です。


モチベーションを“管理”しようとしない

管理職という立場上、成果は求められます。

しかし、モチベーションは管理できません。

管理しようとすると、
部下は防御的になります。

内発的エネルギーは、
安心と対話の中でしか育ちません。

ここで重要になるのが、
前回テーマでもある自己基盤力です。

上司が安定していると、部下は安心します。
安心すると、本音が出ます。
本音が出ると、Willが見えます。

この連鎖が、
1on1対話力とは何か
で解説した“未来を共創する力”へとつながります。


組織全体に与えるインパクト

1on1で内発的動機づけが育つと、組織には変化が起きます。

・挑戦が増える
・主体的な提案が増える
・学習スピードが上がる
・離職率が下がる

管理職研修の本質は、
「やる気を出させる方法」を教えることではありません。

人が自然に動きたくなる環境をつくることです。


月曜からできる実践

次の1on1で、ぜひこの問いを。

「最近、少しでも面白いと感じたことは?」

答えが出なくても構いません。

大切なのは、
上司が見つけようとする姿勢です。

その姿勢が、
部下の内側にある火種を守ります。


まとめ

・モチベーションは上げるものではなく湧き出すもの
・外発動機づけには限界がある
・部下が動かないのはやる気不足ではない
・鍵は内発的動機づけ=Will
・1on1は火種を見つける対話の場

管理職研修で最も重要なのは、

「どう動かすか」ではなく、
「どう引き出すか」という視点です。

1on1が変われば、部下が変わります。
部下が変われば、組織が変わります。

その出発点は、
モチベーションを“上げようとしない”ことにあります。

Tetsuro

Tetsuro

株式会社 2E Consulting 代表。中小企業診断士。アメリカ合衆国ニューヨーク州出身。一橋大学社会学部卒。三菱商事にて製鉄用石炭・鉄鉱石のトレーディング・事業開発・投資事業に携わり、インド・ドイツ・シンガポールに9年間駐在。海外駐在において現地人材の育成・組織開発に携わる中で人材育成に興味を持ち、企業向け研修会社に転職、年間2,000人の受講生にビジネススキルを教える。Harvard Business School Program for Leadership Development 修了(2019年)。その後、独立し、中小企業診断士として数多くの企業経営の現場で経営改善に従事している。

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