「人が集まっていれば組織だ」
そう思っていませんか?
会社に所属している。
名刺を持っている。
同じ部署で働いている。
それだけで、私たちは無意識に「組織だ」と認識してしまいます。
しかし、これは大きな誤解です。
管理職研修やマネジメント研修の場で、私が必ず最初に問いかけるのは、
「あなたのチームは、本当に“組織”ですか?」
という問いです。
人が集まっていることと、組織であることは、まったく別物です。
この誤解は、
「マネジメント=管理業務」という誤解とも深くつながっています。
(▶ マネジメントの定義から整理したい方は
「マネジメントとは何か──『管理』だと思っている限り、組織は弱くなる」
https://2econsulting.co.jp/management1/ もご覧ください。)
■ バーナードが示した「組織の3要件」
経営学者チェスター・バーナードは、著書『経営者の役割』の中で、組織の成立条件として次の3つを挙げました。
- 共通の目的
- 協働意欲
- コミュニケーション
この3つが揃って、初めて「群衆」は「組織」に変わります。
逆に言えば、どれか一つでも欠ければ、それは単なる“人の集まり”にすぎません。
(▶ 組織の3要件を詳しく解説した記事はこちら
「組織とは『人が集まること』ではない」
https://2econsulting.co.jp/organization/ )
これは古典理論ですが、現代の組織開発や管理職研修の土台となる、極めて本質的な視点です。
■ 群衆と組織の違い
例えば、渋谷のスクランブル交差点。
何百人が同時に横断しています。
しかしそこに「組織」は存在しません。
- 共通の目的はない
- 協働意欲もない
- 意思の疎通もない
ただ同じ空間にいるだけです。
一方で、企業の朝礼。
全員が整列し、社長の訓示を聞いている。
一見「組織的」に見えます。
しかし、もし
- 誰も自社の存在意義を語れない
- 仕事の意味を説明できない
- 自分の役割と目的が結びついていない
としたらどうでしょうか。
それは形式だけ整った“見せかけの組織”です。
外からは回っているように見える。
しかし内側では、静かに機能不全が進行している。
管理職研修でよく聞くのは、
「うちの部署、まとまりがないんです」
「言われたことはやるけど、自発性がないんです」
という悩みです。
それは能力の問題ではありません。
組織の3要件が整っていない可能性があります。
🎯 ① 共通の目的──「なぜ」の共有
共通の目的とは、単なるKPIではありません。
売上目標や利益計画は“結果指標”です。
それは目的ではなく、目標です。
目的とは、
- この組織は何のために存在するのか
- 私たちは何を社会に提供するのか
- なぜこの仕事をしているのか
という「Why」の部分です。
目的が曖昧な組織では、意思決定がブレます。
- 短期数字が最優先になる
- 顧客価値が後回しになる
- 部門最適が横行する
その結果、組織は分断されます。
(▶ 「長期的」とは何か?未来責任という視点
https://2econsulting.co.jp/management4/ )
管理職の第一の使命は、
目的を言語化し、繰り返し共有すること
です。
1on1でも、会議でも、日常会話でも、
「なぜそれをやるのか?」
「この仕事は何に貢献しているのか?」
を問い続ける。
それが、組織の軸をつくります。
🤝 ② 協働意欲──人は命令では動かない
目的があっても、協働意欲がなければ組織は動きません。
バーナードは言いました。
人は命令に従うのではなく、協働する意思があって初めて動く。
管理職研修でよく出る誤解は、
「役職があれば人は動く」
という考えです。
しかし実際には、
- 意味を感じない仕事
- 承認されない努力
- 尊重されない環境
では、人は最低限しか動きません。
協働意欲はどこから生まれるのか。
- 自分の仕事が意味を持っている実感
- 誰かの役に立っている感覚
- 尊重されているという安心感
から生まれます。
ここで重要なのが「関係の質」です。
(▶ 成果は「関係の質」から生まれる
https://2econsulting.co.jp/management3/ )
さらに深く理解したい方は、
(▶ 「関係の質」とは何か?
https://2econsulting.co.jp/qualityofrelation/ )
をご覧ください。
感謝する。
承認する。
信頼を示す。
これらは“優しさ”ではありません。
組織設計そのものです。
💬 ③ コミュニケーション──組織の血流
報連相やチャットの頻度が多ければ、
コミュニケーションが取れているとは限りません。
真のコミュニケーションとは、
意味の共有です。
言葉の背後にある、
- 意図
- 価値観
- 判断基準
が共有されて初めて、信頼が生まれます。
ここで問われるのは、管理職自身の定義です。
(▶ 「言葉の定義」の重要性
https://2econsulting.co.jp/importance-of-definition/ )
定義が揃っていない組織では、
同じ言葉を使っていても、意味がバラバラです。
血流が止まれば、組織は壊死します。
部門間の対立
情報の隠蔽
噂話の横行
は、コミュニケーション不全のサインです。
管理職は「話す人」ではなく、
意味をつなぐ人
であるべきです。
🚉 群衆が組織に変わる瞬間
満員電車の中で誰かが倒れたとき。
誰かが声を上げ、
誰かが支え、
誰かが救急車を呼ぶ。
その瞬間、
- 目的(助ける)
- 協働意欲(動こうとする意思)
- コミュニケーション(声かけ)
が同時に機能し、“即席の組織”が生まれます。
職場も同じです。
10人いても、3要件がなければ群れ。
3人でも、揃えば組織。
人数ではありません。
構造です。
■ 管理職の本当の役割
多くの管理職は、
- 数字を追い
- 業務を回し
- 問題を処理する
ことに追われます。
しかし、それは本質ではありません。
(▶ 管理職は「監督」である
https://2econsulting.co.jp/what_is_a_manager/ )
さらに言えば、
(▶ 管理職は「経営職」である
https://2econsulting.co.jp/what-is-a-manager2/ )
マネジメントの本質は、
組織の3要件を整え続けること
です。
戦略は“上物”。
3要件は“土台”。
土台が弱ければ、建物は崩れます。
🌱 自分自身への問い
- あなたのチームには明確な共通目的があるか?
- メンバーは協働意欲を感じているか?
- 対話は信頼を生む時間になっているか?
- 会議は意味の共有の場になっているか?
KPIや制度を整える前に、
この3要件を整える。
それが健全なマネジメントの第一歩です。
■ まとめ
- 組織とは「人の集合」ではなく、3要件で成り立つ構造体
- 共通の目的が軸をつくる
- 協働意欲が推進力を生む
- コミュニケーションが血流を保つ
- 管理職の役割は、3要件を整えること
組織とは、人と人との関係の質の上にしか成り立ちません。
目的を共有し、
意欲を育み、
意味を循環させる。
この3つを地道に整えることが、
どんな戦略よりも組織を強くします。
そしてそれこそが、
管理職研修で最もお伝えしたいマネジメントの本質なのです。
📚 管理職研修で体系的に学びたい方へ
本記事は「組織の3要件」に焦点を当てました。
マネジメントの全体像を体系的に理解したい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
・マネジメントの定義から整理する
https://2econsulting.co.jp/management1/
・成果を生む構造を理解する
https://2econsulting.co.jp/management3/
・管理職の役割を再定義する
https://2econsulting.co.jp/what-is-a-manager2/
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