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管理職研修の効果が出ない原因は「承認欲求」の理解不足にある

「管理職研修を実施しているのに、なかなか行動が変わらない」――人事担当者や経営層からよく聞く悩みのひとつです。研修のカリキュラムや講師の質に問題があるのではなく、実は管理職自身の「承認欲求」の構造を理解できていないことが、根本的な原因であるケースが少なくありません。本記事では、管理職研修の効果を高めるために不可欠な「二つの承認欲求」について解説します。

承認欲求には、二つのタイプがあります。ひとつは「他己承認欲求」、もうひとつは「自己承認欲求」です。この違いを管理職研修の中で明確に伝えることが、管理職の行動変容を促す重要な第一歩となります。

他己承認欲求とは、他人からの評価や承認を求める気持ちのことです。SNSに投稿した写真の「いいね」の数に一喜一憂したり、反応が思ったほど得られなければ不安や嫉妬が芽生えたりする。こうした反応は、まさに他己承認欲求が働いている状態です。ビジネスの世界では、上司からの評価、同期との比較、昇進の早さ、ボーナスの額などが、他己承認欲求を刺激する典型的な場面です。多くのビジネスパーソンが、気づかぬうちにこの他己承認欲求に支配されながら日々を過ごしています。

一方、自己承認欲求とは、自分自身が掲げた目標を達成したときに得られる充実感や喜びを求める気持ちです。たとえば「ゴルフで100を切る」と決め、それを達成した瞬間に味わう深い達成感。他人と比較する必要のない、純粋な自己成長の実感がそこにはあります。これこそが自己承認欲求のエネルギーであり、持続的なモチベーションの源泉となるのです。

他己承認欲求 自己承認欲求
動機の源泉 他人からの評価・称賛 自分が設定した目標の達成
充足感 一時的・不安定 持続的・安定
他者との関係 比較・競争 協力・共創
失敗への反応 自己否定・回避 学習機会と捉える
マネジメントへの影響 部下を支配・抑圧 部下を支援・承認

管理職研修の文脈でこれがなぜ重要かというと、他己承認欲求に支配された管理職は、常に他者と比較し、仲間がライバルへと変わり、心が疲弊していく傾向があるからです。しかも厄介なことに、他己承認欲求は決して満たされ続けません。人は永遠に勝ち続けることはできないからです。たとえ出世を重ねて社長になっても、必ず「もっと上」が存在します。そして頂点に立った瞬間にふと気づくのです。周りに仲間も友もいない。「自分は何のために走ってきたのか」と。

こうした状態に陥った管理職は、部下の成功を素直に喜べなくなります。後輩が先に昇進すれば嫉妬し、同期よりボーナスが多ければ優越感に浸る。次第に、同僚の成功を心から喜べない自分になっていく。そして、自分よりも評価される部下がいれば無意識に押さえつけようとしてしまう。これでは、いくら1on1のスキルやフィードバック手法を学んでも、本質的な変化にはつながりません。管理職研修の効果が出ない真の原因は、実はこの承認欲求の構造に潜んでいるのです。

管理職研修で真に取り組むべきは、管理職一人ひとりが「他己承認欲求の罠」から抜け出し、自己承認欲求を養うプロセスを踏むことです。他人の評価や表面的な成果に振り回されるのではなく、「自分は何を達成したいのか」「自分にとっての成功とは何か」を問い直す機会を、研修の中に組み込む。このプロセスを経た管理職は、部下に対しても同じ視点で関わることができるようになり、チームのメンバーが自律的に成長する組織風土を醸成していくことが可能になります。

この問題をさらに深掘りしてみましょう。他己承認欲求が強い管理職には、いくつかの特徴的な行動パターンが見られます。まず、部下の提案や意見に対して、内容の良し悪しよりも「自分の立場が脅かされないか」を基準に判断してしまうこと。次に、会議の場で部下が良い発言をすると、それを自分の手柄にしようとしたり、逆に過小評価したりしてしまうこと。そして、成果が出たときには自分のリーダーシップの成果だと主張し、うまくいかなかったときには部下の責任にしてしまうこと。これらはすべて、他己承認欲求に支配された行動の典型例です。

一方、自己承認欲求が健全に育っている管理職は、部下の成功を自分のことのように喜び、その過程で自分自身も成長できたことに充実感を覚えます。チームの成果を「みんなの力で達成した」と素直に表現でき、困難な局面でも「これを乗り越えれば、自分たちはもっと強くなれる」と前向きに捉えることができます。

管理職研修で承認欲求の構造を教える際に効果的なのは、管理職自身に「自分はどちらの承認欲求が強いか」を振り返ってもらうワークを取り入れることです。たとえば、「最近、最も嬉しかった仕事上の出来事は何か」「それはなぜ嬉しかったのか」と問いかけます。その答えが「上司に評価された」「同期より先に昇進できた」であれば、他己承認欲求が優位である可能性が高い。一方、「自分で設定した目標を達成できた」「チームメンバーの成長を実感できた」であれば、自己承認欲求が育っている証拠です。

こうした自己認識のプロセスを管理職研修に組み込むことで、管理職は自分自身の行動パターンを客観的に見つめ直すことができます。そして、他己承認欲求の罠に気づいた管理職は、意識的に自己承認欲求へとシフトしていくことが可能になるのです。このシフトこそが、管理職研修の真の効果を生み出す鍵と言えるでしょう。

では、管理職研修において、具体的にどのようなプログラムが承認欲求の転換に有効なのでしょうか。効果的なアプローチのひとつが、「成功体験の源泉分析」です。管理職に、これまでのキャリアの中で最も充実感を覚えた瞬間を3つ挙げてもらい、それぞれ「なぜ嬉しかったのか」を深掘りしていきます。その喜びが「誰かに認められたから」なのか、「自分自身の成長を実感できたから」なのかを丁寧に分析することで、自分の承認欲求の傾向が浮き彫りになります。

もうひとつ有効なのが、「理想の管理職像」を描くワークです。「自分が部下だったとき、最も尊敬できた上司はどんな人だったか」「その上司の何が素晴らしかったか」を言語化してもらうのです。多くの場合、管理職が尊敬する上司像には、「自分自身に自信を持っていた」「他者と比較せずに、自分の信念で行動していた」「部下の成功を心から喜んでくれた」といった特徴が挙がります。これはまさに、自己承認欲求が健全に育った人物像です。こうした気づきを通じて、管理職は「自分もそうなりたい」という内発的な動機を持つようになり、管理職研修の学びが深い行動変容につながっていくのです。

管理職研修の場で承認欲求の転換を促す際に、もうひとつ大切なのは「完璧を求めない」ことです。他己承認欲求から完全に解放されることは、人間である以上、現実的ではありません。大切なのは、自分の承認欲求の傾向に「気づいている」状態を維持することです。気づいていれば、他己承認欲求に引っ張られそうになったとき、意識的に自己承認の軸に立ち返ることができます。この「気づきの力」を養うことこそが、管理職研修の最も重要な成果のひとつなのです。

この変革は一朝一夕には実現しませんが、管理職研修をきっかけに、一人ひとりの管理職が自分の承認欲求のあり方を見つめ直すことが、組織文化を変える最初の一歩となります。まずは経営層や人事部門が「二つの承認欲求」という視点を持ち、管理職研修の設計に反映させることから始めてみてください。

自分自身の内側にブレない軸を持った管理職は、部下を真の意味で「承認」できるようになります。それが、チーム全体のエンゲージメントを高め、組織の持続的な成長につながっていくのです。御社の管理職研修は、この「二つの承認欲求」を扱っていますか。管理職の行動変容が進まない原因は、意外なところに潜んでいるかもしれません。

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Tetsuro

Tetsuro

株式会社 2E Consulting 代表。中小企業診断士。アメリカ合衆国ニューヨーク州出身。一橋大学社会学部卒。三菱商事にて製鉄用石炭・鉄鉱石のトレーディング・事業開発・投資事業に携わり、インド・ドイツ・シンガポールに9年間駐在。海外駐在において現地人材の育成・組織開発に携わる中で人材育成に興味を持ち、企業向け研修会社に転職、年間2,000人の受講生にビジネススキルを教える。Harvard Business School Program for Leadership Development 修了(2019年)。その後、独立し、中小企業診断士として数多くの企業経営の現場で経営改善に従事している。

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