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管理職研修で教えるべき「褒める」と「承認する」の決定的な違い

管理職研修で「部下を褒めましょう」と指導している企業は少なくないでしょう。もちろん、部下の良い行動にポジティブな反応を返すこと自体は大切です。しかし、「褒める」と「承認する」の違いを正確に理解しないまま実践すると、意図とは逆の効果を生んでしまうことがあります。管理職研修でこの違いをしっかり教えることは、部下育成の質を根本から変える可能性を秘めています。

この違いを理解するために、ひとつの身近な例を考えてみましょう。子供がお皿を洗ったとき、親が二通りの声掛けをする場面です。ひとつ目は「お皿を洗うなんて、偉いわね!」という声掛け。もうひとつは「お皿を洗ってくれて、ありがとう。助かったわ!」という声掛けです。

一見すると、どちらもポジティブな反応に見えます。しかし、この両者には決定的な違いがあります。前者は、親が上で子供が下という上下関係を暗黙の前提にした「評価」です。言い換えれば、「あなたの行動を、私が判定してあげた」というニュアンスが含まれています。一方、後者は、お皿を洗ってくれたという行為そのものを受け止め、評価ではなく感謝を伝えています。これが「承認」の本質です。前者が上下の関係性に基づく「ジャッジ」であるのに対し、後者は対等な関係性に基づく「リスペクト」と言えるでしょう。

この違いが管理職研修で極めて重要なのは、ビジネスの現場でもまったく同じ構造が生じるからです。前者のような「評価型の褒め方」を続けると、部下は「上司に褒められるためにやろう」という他己承認欲求を強めていきます。上司の顔色をうかがいながら仕事をするようになり、指示待ち型の人材になってしまう可能性があります。さらに、褒められなくなった途端にモチベーションが低下するという、非常に脆い状態にもなりかねません。上司の評価という外部のエネルギーに依存している状態では、自律的な成長は望めないのです。

「褒める」= 評価
「お皿を洗うなんて、偉いわね!」
上下関係を前提としたジャッジ
→ 他己承認欲求を強化
「承認する」= 感謝
「お皿を洗ってくれて、ありがとう。助かったわ!」
対等な関係に基づくリスペクト
→ 自己承認欲求を強化

一方、後者のような「承認」を行うと、部下は「自分の行動が誰かの役に立った」と感じ、自分の存在そのものに自信を持てるようになります。「お皿を洗ったことでお母さんの役に立った」という純粋な充実感。ビジネスに置き換えれば、「自分の仕事がチームの成果に貢献した」「自分の提案がクライアントの課題解決につながった」という実感です。この自己承認欲求の高まりこそが、主体的に動ける人材へと成長する原動力となるのです。

管理職研修でこの違いを明確に伝えることで、管理職のコミュニケーションの質は劇的に変わります。具体的には、次のような実践が可能になります。まず、部下の成果だけでなくプロセスや取り組み姿勢を言葉にして伝えること。たとえば「今月の売上が目標を達成できた」という結果ではなく、「あの難しいクライアントに粘り強く提案を続けた姿勢が、チーム全体に良い影響を与えていた」というプロセスに光を当てるのです。次に、「すごいね」という上から目線の評価ではなく、「あなたのおかげで助かった」「あなたの工夫がチームの効率を上げてくれた」という感謝と承認の言葉を日常的に使うこと。そして何より、部下の存在そのものを認め、一人の人間として敬意を持って接することです。

これは単なる言葉づかいのテクニックではありません。管理職自身が自己基盤力を高め、部下を「評価する対象」ではなく「共に成長するパートナー」として捉える視座を持つことから始まるのです。管理職が自分自身に自信を持ち、内面が安定していてこそ、本当の意味での「承認」が自然にできるようになります。

この「褒める」と「承認する」の違いは、実は日本の企業文化において特に重要な意味を持っています。日本企業では伝紱的に、上司が部下を「評価する」という関係性が色濃く残っています。年功序列や職位による上下関係が明確な組織では、上司の一言が部下のモチベーションを大きく左右します。だからこそ、その一言が「評価」なのか「承認」なのかによって、組織文化全体の方向性が決まると言っても過言ではありません。

管理職研修でこの違いを体感的に理解してもらうために効果的な方法があります。それは、ロールプレイを通じて、「褒める」と「承認する」の違いを実際に体験してもらうことです。同じ状況で「偉いね」と言われた場合と「ありがとう、助かった」と言われた場合、受け手としてどちらが心地よく感じるか。多くの場合、後者のほうが「自分の存在が認められた」という深い満足感を感じると報告されます。

また、承認の実践において見落とされがちなのが、「存在承認」という概念です。行動や成果に対する承認だけでなく、その人がチームにいること自体への感謝を伝えること。たとえば「あなたがいてくれるだけで、チームの雰囲気が明るくなっている」「毎朝、笑顔で挨拶してくれるのが嬉しい」といった声掛けです。これは何かの成果に対する反応ではなく、その人の存在そのものを認める行為であり、最も深いレベルの承認と言えます。

このような承認のスキルは、管理職研修で学んだあと、日々の職場で意識的に実践し続けることで身についていきます。最初はぎこちなくても構いません。大切なのは、管理職自身が「評価と承認は違う」という認識を持ち、日常のコミュニケーションの中で少しずつ承認の言葉を増やしていくことです。

管理職研修で「承認」のスキルを身につけた管理職がチームに与える影響は、想像以上に大きいものがあります。ある製造業の企業では、管理職研修で「褒める」と「承認する」の違いを学んだ管理職がいるチームで、半年間のエンゲージメントスコアが平均15ポイント向上したというデータが報告されています。特に「上司は自分の成長に関心を持ってくれている」「自分の意見を尊重してくれる」という項目で顕著な改善が見られました。

また、「承認」の文化が根づいたチームでは、メンバー間でも自然に承認し合う関係が生まれます。上司から承認されることを体験した部下は、同僚に対しても同じような関わり方をするようになるのです。「あなたの提案のおかげで会議がスムーズに進んだ」「あの資料、とても分かりやすくて助かった」といった日常的な承認の言葉が飛び交うチームは、自然と生産性も高まります。

このように、管理職研修での「承認」の学びは、管理職個人のスキル向上にとどまらず、チーム全体の文化変革、さらには組織全体のコミュニケーション品質の向上につながるのです。だからこそ、管理職研修において「褒める」と「承認する」の違いを明確に教えることには、極めて高い投資対効果があると言えます。

管理職研修を通じて承認の文化を浸透させることは、組織の離職率低下にも大きく貢献します。Gallup社の調査でも、退職理由の上位に「直属の上司との関係」が挙げられています。上司から適切に承認されていると感じている社員は、組織へのエンゲージメントが高く、転職意向が低いことが多くの研究で示されています。つまり、管理職研修で「承認」を教えることは、人材流出を防ぐ最も費用対効果の高い施策のひとつと言えるのです。

御社の管理職研修で「褒め方」を教えているなら、ぜひ「承認」との違いにまで踏み込んでみてください。この小さな一歩が、組織全体のコミュニケーション文化を変えるきっかけになるはずです。

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Tetsuro

Tetsuro

株式会社 2E Consulting 代表。中小企業診断士。アメリカ合衆国ニューヨーク州出身。一橋大学社会学部卒。三菱商事にて製鉄用石炭・鉄鉱石のトレーディング・事業開発・投資事業に携わり、インド・ドイツ・シンガポールに9年間駐在。海外駐在において現地人材の育成・組織開発に携わる中で人材育成に興味を持ち、企業向け研修会社に転職、年間2,000人の受講生にビジネススキルを教える。Harvard Business School Program for Leadership Development 修了(2019年)。その後、独立し、中小企業診断士として数多くの企業経営の現場で経営改善に従事している。

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