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1on1がうまくいかない本当の理由

―管理職研修で最初に整えるべき「自己基盤力」とは何か

「1on1がうまくいかない。」

これは、私が数多くの管理職研修の現場で最も頻繁に耳にする言葉です。

・部下が本音を話してくれない
・深い話にならず、業務確認で終わる
・沈黙が続き、気まずい
・やった感はあるが、何も変わらない

制度として1on1を導入している企業は増えています。
しかし、「制度はあるが、対話が機能していない」という状態も同時に増えています。

多くの管理職は、こう考えます。

「質問力が足りないのではないか」
「コーチングスキルを学ぶべきではないか」

ですが、数多くの管理職研修を通じて見えてきた本質は、少し違います。


1on1がうまくいかない最大の理由は「スキル不足」ではない

結論から言えば、

1on1がうまくいかない最大の理由は、スキル不足ではありません。

本当の原因は、
上司自身の「自己基盤力」が揺れていることにあります。

実はこのテーマは、
拙稿「管理職研修で鍛える“未来を共創する力”とは何か」でも触れていますが、
1on1対話力の出発点は、技術ではなく“在り方”です。


なぜ、管理職研修でスキルを学んでも元に戻るのか

多くの管理職研修では、次のようなテーマが扱われます。

・傾聴の技術
・効果的な問いかけ
・フィードバックの方法
・承認の伝え方

これらは間違いなく重要です。

たとえば、

で詳しく解説しています。

しかし、現実はどうでしょうか。

研修直後は実践できても、
3か月後には元に戻っている。

なぜか。

それは、「在り方」が整っていない状態で技術だけを積み上げても、プレッシャーの中で崩れてしまうからです。


上司は常に“圧力”の中にいる

管理職とは、

・上からの期待
・横との調整
・下の育成

という三方向の圧力の中にいる存在です。

その状態で自己基盤が弱いと、無意識に防御反応が起きます。

・正解を出そうとする
・評価目線になる
・早く結論を出そうとする
・沈黙を埋めようとする

この状態では、どれだけ「質問技術」を学んでも、
1on1は深まりません。


自己基盤力とは何か

自己基盤力とは、
上司としての内側の安定性です。

具体的には、次の4つです。

  • 他者評価に過度に振り回されない
  • 自分の「ありたい姿」とつながっている
  • 過剰な自責を手放している
  • 自分が影響できる範囲に責任を持てている

これはメンタル論ではありません。

管理職として成果を出し続けるための構造的な土台です。

実際、
自己肯定感と自己効力感がなければ、人は動けない
でも解説した通り、
人が挑戦するには心理的な土台が不可欠です。

同じことが、上司にも言えます。


部下は「言葉」よりも「状態」を見ている

部下は非常に敏感です。

・上司が焦っていないか
・余裕があるか
・評価していないか
・本当に聴いているか

言葉よりも、空気を感じ取っています。

たとえば、

部下:「最近、少し自信がなくて…」
上司:「そんなことないよ。もっと自信を持とう」

これは励ましですが、
実は“聴いていない”状態でもあります。

なぜなら、
上司が「不安を早く消そう」としているからです。

自己基盤力が弱いと、
部下のネガティブ感情に耐えられません。

結果として、すぐに解決しようとします。

しかし多くの場合、
部下が求めているのは「解決」ではなく「理解」です。


自己基盤が揺れると起こる4つの現象

管理職研修で頻繁に見られるのは、次の現象です。

  • 正論で返してしまう
  • アドバイスが多くなる
  • 沈黙が怖くなる
  • 良い上司を演じて疲れる

特に多いのが、
「良い上司を演じる」状態です。

しかし、部下は演技を見抜きます。

むしろ信頼されるのは、

・迷いながらも誠実であること
・完璧ではないが真剣であること
・価値観が一貫していること

です。

管理職研修の本質は、
強くなることではありません。揺れにくくなることです。


自己基盤力を構造化する

自己基盤力は、次の掛け算で整理できます。

① 自分軸

どんな上司でありたいか。

② 自己承認

他者承認がなくても、自分を認められるか。

③ 健全な自責

「全部自分が悪い」ではなく、
「自分が影響できる部分には責任を持つ」という姿勢。

この土台が整うと、

・部下が何を話しても動じない
・評価せずに受け止められる
・沈黙を待てる

という状態になります。

そしてここから、
真の1on1対話力が立ち上がります。


1分でできる実践

1on1の前に、たった1分。

自分にこう問いかけてください。

「今日は、どんな上司でいたいだろうか?」

安心感を与える上司か。
急がずに聴ける上司か。
成長を信じられる上司か。

姿勢が変わると、声が変わります。
声が変わると、部下の話し方が変わります。

これは理論ではなく、
管理職研修の現場で何度も確認してきた事実です。


1on1は組織文化の縮図である

1on1は単なる面談制度ではありません。

組織文化の縮図です。

上司が安定していれば、
部下は挑戦しやすくなります。

挑戦が増えれば、
学習が進みます。

学習が積み重なれば、
成果は後からついてきます。

この構造は、
モチベーションは上げるものではない

ホメオスタシスと1on1の本質
でも詳しく解説しています。


管理職研修の本当の目的

管理職研修の目的は、
スキル付与ではありません。

・組織の再現性を高めること
・人が育つ土壌をつくること
・未来の成果を設計できる状態をつくること

その出発点が、自己基盤力です。

1on1を変えたいなら、
質問技術を磨く前に、

「どんな自分で部下と向き合うか」

を選ぶこと。

それが、
部下が“動きたくなる”上司への第一歩です。


まとめ

・1on1がうまくいかない原因はスキル不足ではない
・本質的課題は自己基盤力にある
・土台が揺れると、部下は本音を話せない
・自己基盤力=自分軸 × 自己承認 × 健全な自責
・管理職研修の成否は、テクニックではなく土台で決まる

1on1を変えることは、組織を変えることです。

そしてその起点は、
常に「上司の内側」にあります。

Tetsuro

Tetsuro

株式会社 2E Consulting 代表。中小企業診断士。アメリカ合衆国ニューヨーク州出身。一橋大学社会学部卒。三菱商事にて製鉄用石炭・鉄鉱石のトレーディング・事業開発・投資事業に携わり、インド・ドイツ・シンガポールに9年間駐在。海外駐在において現地人材の育成・組織開発に携わる中で人材育成に興味を持ち、企業向け研修会社に転職、年間2,000人の受講生にビジネススキルを教える。Harvard Business School Program for Leadership Development 修了(2019年)。その後、独立し、中小企業診断士として数多くの企業経営の現場で経営改善に従事している。

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