管理職研修ありたい姿Will Must Can
「ありたい姿」を描かずして、真の課題設定はできない
研修で繰り返しお伝えしている原則があります。それは、「課題を設定するには、まず『ありたい姿』を具体化しなければならない」ということです。
「ありたい姿」が曖昧なままでは、抽出される課題も、そこへの行動もすべて曖昧になります。しかし、現場の管理職からは「日々の業務に追われ、先のことは考えられない」「状況変化が激しすぎて将来像が見えない」という声も多く聞かれます。
だからこそ、方法論として「ありたい姿を描く技術」を学ぶ必要があります。ゴールが鮮明になれば、自ずと「何が足りないか(課題)」が浮き彫りになり、優先順位(行動)も自然と決まってくるからです。
Will・Can・Mustの本質と「コンフォートゾーン」の転移
Will・Can・Mustは目標設定の定番フレームワークですが、その「真の効能」は意外と知られていません。このフレームワークの肝は、「コンフォートゾーン(快適な空間)を未来に移すこと」にあります。
人間は本来、現状を維持しようとする生存本能(ホメオスタシス)を持っています。三日坊主で終わってしまうのは、脳が「現状」をコンフォートゾーンだと認識し、そこから出ようとする変化を拒むからです。
これを打破するには、「ありたい姿」を脳に「今の自分にとって当たり前の姿」だと思い込ませる必要があります。そのための3要素が、Will・Can・Mustです。
- Will: 心からワクワクすること
- Can: 自分らしさ(強み)を発揮できること
- Must: 他者や社会から求められていること
この3要素が重なったとき、脳にとってのコンフォートゾーンが「未来の姿」へと移行します。すると、無理に頑張らなくても、脳が勝手に「現状とのズレ」を解消しようと指令を出し、自然に行動が加速するのです。
Will・CanなきMustは、かつての「ノルマ」に成り下がる
「〜ねばならない」という義務感で動くのか、「周囲に期待されている」という使命感で動くのか。前者は「ノルマ」であり、後者は「ゴール」です。
この「ノルマ」という言葉、実はロシア語に由来します。終戦直後、シベリアの強制収容所(ラーゲリ)に抑留された日本の方々が、極寒と飢えの中で課せられたあまりにも過酷な割当労働。それが「ノルマ」でした。
日本人が、命を落とすほどの極限状態で強制的に働かされ、その苦しみとともに日本へ持ち帰った言葉が、この「ノルマ」という響きには刻まれています。日本人として、この歴史的な痛みと背景を忘れてはならないと感じます。
Will(やりたい)もCan(強みの発揮)も無視され、ただ「生き延びるために、達成しなければならない数字」として押し付けられるMustは、現代のビジネスにおいても人を疲弊させ、心を摩耗させるだけの「ノルマ」でしかありません。
逆に、自分の内なる願い(Will)と、持ち前の武器(Can)が活かされる場所であれば、周囲からの要請(Must)は、自分を奮い立たせる最高のガソリン——すなわち「ゴール」へと昇華されるのです。
現在の私は、Will(管理職から日本を元気にしたい)を持ち、Can(体系化して伝えるスキル)を発揮しているからこそ、Must(管理職を「罰ゲーム」から救ってほしいという期待)に全力で取り組めています。会社員時代より長時間働いていますが、「働きすぎて辛い」と感じたことは一度もありません。
Will・Must・Canの3つの観点
改めて、3つの要素を整理しておきましょう。管理職研修ではこのフレームを個人にも組織にも応用できます。
自分や組織が本当に望んでいること。情熱やモチベーションの源泉。
自分や組織が持っている強み・スキル・リソース。実現可能性の基盤。
市場・顧客・社会から求められること。避けられない使命や義務。
▲ Will(やりたい)・Can(できる)・Must(やるべき)の3つが重なる交点が「ありたい姿」
3つの円が重なる部分——「やりたい × できる × やるべき」の交点——が、最も実現可能性が高く、かつ意味のある「ありたい姿」となります。管理職研修ではこの3つの観点から「ありたい姿」を問い直す時間を取ることで、参加者が自分自身のビジョンを明確化できます。
個人と組織の「ありたい姿」を統合する
管理職にとって重要なのは、「個人のWill・Can・Must」と「組織のWill・Can・Must」をすり合わせることです。
自分の情熱(Will)が乗らない領域で課題を設定してもモチベーションは続きません。一方で、組織の要請(Must)を無視すれば、それは単なる独りよがりになります。
- Will(情熱): チームをどうしたいか?
- Can(強み): 自組織の勝ちパターンは何か?
- Must(使命): 会社や市場から何を期待されているか?
この重なりを言語化できる管理職は、メンバーに対しても「なぜこの仕事が必要なのか」というWhyを力強く語ることができます。
まとめ:今日、「3年後の姿」を1枚の紙に書き出す
「ありたい姿」の言語化に、完璧さは必要ありません。まずはノートに、Will・Can・Mustの3つの円を描いてみてください。
「ありたい姿」と「現状」のギャップが可視化された瞬間、組織の停滞は終わり、課題解決に向けたダイナミックな動きが始まります。管理職研修での学びは、その最初の一歩となる「1枚の紙」から始まります。
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