はじめに:その目標設定、「やること」を書いていませんか?
「DX研修を3回実施する」「全拠点にシステムを導入する」「新入社員研修を実施する」——。
こうした目標設定をしたことはないでしょうか。一見すると具体的で、良い目標設定に見えます。しかし、これらには共通する致命的な問題があります。
これらは「目標」ではなく、「行動計画」です。
目標と行動計画の混同は、目標設定において最も頻繁に起きる問題の一つです。そして、この混同を一瞬で見抜くシンプルなリトマステストがあります。
当社の管理職研修では、このテストを目標設定の品質チェックとして活用しています。本記事では、目標設定の品質を劇的に変える「Doing/Being」の区別を解説します。
管理職研修で使う目標設定のリトマステスト
目標設定を行ったとき、次の問いを当ててみてください。
「それは Doing(やること)ですか? Being(なっている状態)ですか?」
この一つの問いだけで、目標設定における混同は即座に見抜けます。
LITMUS TEST
Doing(やること) vs Being(なっている状態)の具体例
| 部門 | ❌ Doing(行動計画) | ✅ Being(目標) |
|---|---|---|
| DX推進 | DX研修を3回実施する | 全部門がDXツールを日常業務で活用している |
| 人事 | 新入社員研修を実施する | 新入社員の上長全員が育成計画を自分の言葉で説明できる |
| 経理 | 経費精算システムを導入する | 全社員が新システムで精算を完了し、紙の伝票がゼロになっている |
| 営業 | 顧客訪問を月20件実施する | 主要顧客10社との定例!1TGが確立し、�件パイプラインが可視化されている |
チェックポイント:「それを達成した後、組織はどんな状態になっているか?」と問い直してみてください。Doingが出てきたら、その先のBeingを探ることで目標設定の品質が劇的に上がります。
具体例を見てみましょう。
DX推進部門の目標設定:
– Doing:「DX研修を3回実施する」
– Being:「全部門がDXツールを日常業務で活用している」
人事部門の目標設定:
– Doing:「新入社員研修を実施する」
– Being:「新入社員の上長全員が、育成計画を自分の言葉で説明できる」
経理部門の目標設定:
– Doing:「月次決算を5営業日で締める」
– Being:「経営陣が毎月、正確な財務データに基づいて意思決定できている」
品質管理部門の目標設定:
– Doing:「検査マニュアルを改訂する」
– Being:「全ラインで検査基準が統一され、担当者によるバラつきがない」
目標設定として書くべきは、Beingです。 Doingは、行動計画(What)の段階で書くものです。
なぜ目標設定で「Doing」を書いてはいけないのか
目標設定でDoingを書くことの問題は、行動が自己目的化することです。
「DX研修を3回実施する」な目標設定すると、研修を3回開催した時点で「目標達成」になります。しかし、研修を3回やったところで、現場がDXツールを使いこなしていなければ、本来の目的には近づいていません。
一方、「全部門がDXツールを日常業務で活用している」というBeingで目標設定をすれば、研修は目標達成のための手段の一つとして位置づけられます。研修だけでなく、現場でのOJT、マニュアル整備、ヘルプデスクの設置など、複数の打ち手を組み合わせることも自然に発想できます。
つまり、Beingで目標設定をすると、手段の選択肢が広がるのです。 Doingで固定してしまうと、その一つの行動にしか目が向かなくなります。
管理職研修で伝える「Being」は目標設定全体を貫くキーワード
当社の管理職研修では、「Being(なっている状態)」という概念が目標設定のフレームワーク全体を貫いていることをお伝えしています。
- 目的(Why)の目標設定は、「ありたい姿」= Being で描くもの
- KGI・KPIの目標設定は、「実現している状態」= Being で記述するもの
- 行動計画(What)は、「具体的にやること」= Doing で書くもの
目的がBeingで描かれるものならば、その達成度を測るKGI・KPIもまたBeingで目標設定されるべきです。数値は、Beingを表現するための一つの手段に過ぎません。
大切なのは、「どんな状態が実現しているか」を具体的に描写し、関係者全員がその達成を判断できるように目標設定することです。
目標設定で「Being」で書くためのコツ
「Beingで目標設定せよ」と言われても、最初は戸惑うかもしれません。Doingのほうが書きやすいのは自然なことです。なぜなら、行動は目に見えるものだからです。
管理職研修でお伝えしている目標設定のコツは、「その行動の結果として、どんな状態になっていたいのか」を問い直すことです。
「DX研修を3回実施する」→ その結果、どうなっていたい? → 「全部門がDXツールを日常業務で活用している」
「検査マニュアルを改訂する」→ その結果、どうなっていたい? → 「全ラインで検査基準が統一され、担当者によるバラつきがない」
このように、「その行動の先にある状態」を考えることで、目標設定がDoingからBeingへと変換できます。
もう一つの目標設定のコツは、文末を確認することです。Doingは「〜する」「〜を実施する」で終わります。Beingは「〜している」「〜な状態になっている」「〜できている」で終わります。文末を見るだけで、目標設定がDoingかBeingかは判別できます。
目標設定で「定量化できない」悩みもBeingで解決できる
前回の記事で、目標設定における指標の三つのレベル(数値指標、状態目標、マイルストーン)を紹介しました。
「うちの部門は目標設定で数値化できない」という悩みの多くは、Beingで目標設定することで解決します。
人事部門であれば、「新入社員の配属先の上長全員が、育成計画を自分の言葉で説明できる状態になっている」。DX推進部門であれば、「全部門がDXツールを日常業務で活用し、紙の申請書がゼロになっている」。
数値ではありませんが。達成したかどうかは誰が見ても判断できます。無理に数値化して目的から乖離するよりも、具体的なBeingで目標設定するほうが、はるかに意味のある目標になります。
まとめ:たった一つの問いで、目標設定の品質は変わる
管理職研修で学ぶ目標設定の品質チェックに、複雑なフレームワークは必要ありません。
たった一つ、「それはDoing? それともBeing?」と問いかけるだけで十分です。
- KGI・KPIの目標設定がDoingになっていたら、「その行動の結果、どんな状態になっていたいか?」を考え直す
- 行動計画(What)はDoingでOK——むしろ、ここはDoingでなければ実行に移せない
この区別を意識するだけで、目標設定の質は劇的に変わります。次に目標設定を行うとき、ぜひこのリトマステストを当ててみてください。
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