──組織は「ゆっくり壊れる」
マネジメントとは、未来に対する責任を負う存在です。
前回の記事
▶︎ マネジメントとは何か──「管理」だと思っている限り、組織は弱くなる
で述べた通り、マネジメントの本質は「長期的な組織成果の最大化」にあります。
では、その未来責任を果たすべきマネジメントが“不在”になったとき、組織はどうなるのでしょうか。
結論から言います。
組織は、ゆっくりと壊れていきます。
事故、不正、疲弊、離職――。
それらは突然起きるのではありません。
マネジメント不在の積み重ねの帰結です。
■ 福知山線脱線事故が示したもの
2005年、西日本旅客鉄道(JR西日本)の福知山線で脱線事故が発生し、107名が犠牲となりました。
直接の原因は速度超過でした。
しかし、背景を丁寧に見ていくと浮かび上がるのは、構造的なマネジメント不在です。
当時の組織では、厳格な時間管理とダイヤ遵守が最優先事項とされていました。
遅延を出した運転士には「日勤教育」と呼ばれる懲罰的研修が課され、強い心理的圧力がかかっていたと報告されています。
結果として現場は、
「安全」よりも「定時運行」を優先せざるを得ない構造
に追い込まれていきました。
本来、組織として最優先すべきは何だったのか。
安全か、数字か。
命か、評価か。
その問いに対する明確なマネジメントの意思が、機能していなかったのです。
■ マネジメント不在とは何か
ここで重要なのは、「マネジメント不在」とは役職者がいない状態ではないということです。
役職はある。
会議もある。
評価制度もある。
それでもマネジメントが不在になることがあります。
例えば、
・未来への方向性が示されない
・優先順位が曖昧
・数字だけが独り歩きする
・倫理より成果が優先される
・長期責任を語る人がいない
つまり、
方向性を示す意思が機能していない状態
それがマネジメント不在です。
マネジメントとは「意思の体系化」です。
この定義については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
■ 短期成果主義の連鎖
多くの企業で見られるのが、短期成果主義の連鎖です。
・四半期利益に縛られる経営
・売上至上主義に走る営業現場
・KPI達成だけが評価軸
・未達成なら詰め文化
共通しているのは、
未来を守る視点の欠落
です。
本来、マネジメントの役割は短期と長期のバランスを取ることです。
時間軸の考え方については、
▶︎ マネジメントがみるべき時間軸とは?
でも解説しています。
短期成果を優先し続けると、
事故、不正、離職という構造的帰結に至ります。
■ 不正は「倫理崩壊」ではなく「構造の帰結」
東芝の不正会計問題。
ビッグモーターの不祥事。
これらは個人のモラルの問題だけでは説明できません。
短期数字を優先する構造が、
現場を倫理より成果へと向かわせた。
これは「マネジメント=管理」という誤解とも深くつながっています。
マネージャーが「経営職」として未来責任を持てていれば、
意思決定は変わっていたはずです。
■ 静かに進行する「人材の崩壊」
事故や不正よりも深刻なのが、人材の疲弊です。
・達成不能な目標
・終わらない残業
・詰めるだけの会議
・承認のない文化
優秀な人材ほど、静かに離れていきます。
そして組織には、
・指示待ち人材
・リスク回避型人材
・発言しない人材
が増えていく。
この現象は、「関係の質」が崩れている証拠でもあります。
▶︎ 関連記事:関係の質とは何か?──成果を生む組織の循環構造
関係の質が低下すると、
思考の質が落ち、
行動の質が下がり、
結果の質が下がる。
これは偶然ではなく、構造です。
■ なぜマネジメントは不在になるのか
理由の一つは、管理業務への過度な集中です。
勤怠管理
予算管理
進捗確認
必要ですが、それだけでは未来は生まれません。
もう一つは、プレーヤー成功体験の罠です。
優秀な個人が、そのまま管理職になる。
その結果、
・任せられない
・育成より即効性を優先
・短期成果主義を加速
という状態になります。
この問題については、
▶︎ 関連記事:マネージャーは「監督」である
でも詳しく触れています。
■ 管理職は「未来を守る盾」である
マネジメント不在の組織は、必ずどこかで破綻します。
だからこそ管理職は、
短期数字の番人ではなく、未来の成果を守る盾
でなければなりません。
守るべきものは何か。
・安全
・倫理
・人材
・組織文化
・持続可能性
未来を創るだけでなく、未来を守る。
それが本来のマネジメントです。
■ 自分自身への問い
・あなたの職場では短期成果だけが優先されていないか。
・未来の成果を削る意思決定をしていないか。
・部下は安心して声を上げられているか。
・あなたは未来責任を語れているか。
マネジメント不在は、ゆっくりと組織を蝕みます。
そして気づいたときには、取り返しがつかないこともある。
■ まとめ
・マネジメント不在は事故・不正・離職を招く
・短期成果至上主義は構造的リスクを生む
・プレーヤー思考のままの昇格も不在を生む
・管理職には「未来責任」という視座が必要
組織が壊れるとき、
そこには必ずマネジメントの空白があります。
管理職とは、未来を創る存在であると同時に、
未来を守る存在でもあるのです。
📚 関連記事
・マネジメントとは何か──「管理」だと思っている限り、組織は弱くなる
・誤解から学ぶマネジメントの本質
・マネージャーは経営職である
・関係の質とは何か
・マネジメントがみるべき時間軸とは?
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