2E式管理職養成プログラム

「自己基盤力」をベースに

管理職を“罰ゲーム”にしないための、マネジメント再設計。

お問い合わせ

ご質問、ご相談、お気軽にお寄せください。

管理職研修に科学的根拠を|褒め方が部下の挑戦意欲を左右する研究結果

管理職研修で「部下を褒めることが大切だ」と伝えている企業は多いでしょう。しかし、褒め方を間違えると、かえって部下の挑戦意欲を削いでしまう可能性があることをご存じでしょうか。これはモチベーション研究で著名なスタンフォード大学のキャロル・S・ドゥエック教授による実験で明確に示されています。管理職研修にこうした科学的根拠を組み込むことで、管理職の行動変容はより確実なものになります。

この実験では、小学5年生の児童を対象に、まず比較的簡単な課題を全員に解かせました。全員が高得点を取れるように設計された課題です。その後、児童を二つのグループに分け、それぞれに異なる言葉でフィードバックを行いました。「能力称賛グループ」には「すごいね! とても頭がいいんだね」と知能や才能を称賛し、「努力称賛グループ」には「とても頑張ったんだね」と努力やプロセスを承認したのです。

次に、「難しいけれど学びが多い課題」と「簡単で確実に成功できる課題」のどちらかを児童に選ばせたところ、非常に興味深い結果が出ました。能力を褒められた子どもたちは失敗を恐れて簡単な課題を選ぶ傾向が顕著に表れたのに対し、努力を承認された子どもたちは難しい課題にも果敢に挑戦する姿勢を見せたのです。

全員に簡単な課題を実施 能力称賛グループ 「頭がいいんだね!」 努力承認グループ 「頑張ったんだね!」 簡単な課題を選択 😟 失敗を恐れ、挑戦を回避 難しい課題に挑戦 💪 困難を成長のチャンスに 「何を」褒めるかが、挑戦意欲を左右する
ドゥエック教授の実験:フィードバックの違いが行動を変える

さらに、難しい課題に直面した際の反応にも大きな違いがありました。能力を褒められた子どもは自信を喪失しやすく、課題への関心も急速に薄れていきました。「自分は頭が良い」と言われたがゆえに、「できなかったら頭が悪いことになる」という恐怖が生まれたのです。つまり、能力を褒めることが、逆に子どもの挑戦意欲にブレーキをかけてしまったのです。一方、努力を承認された子どもは、困難そのものを成長のチャンスと捉え、粘り強く取り組み続けました。「頑張ったことが認められた」からこそ、「もっと頑張ればもっと成長できる」という前向きな思考回路が自然に働いたのです。

この研究結果から導かれる教訓は明確です。「能力を褒められた子ども」は他者からの評価を気にするようになり、他己承認欲求が強まったのに対し、「努力を承認された子ども」は自分の成長を価値と感じ、自己承認欲求を育てたということです。挑戦を恐れず、失敗すらも糧にできるかどうか。そのカギは、どんな言葉をかけられるか――つまり「評価」か「承認」かにあるのです。

この実験結果を管理職研修に当てはめると、その示唆は非常に大きいと言えます。「さすがだね、君は優秀だ」「センスがあるね」という能力への称賛は、部下の他己承認欲求を強め、失敗を恐れる風土をつくってしまいます。反対に、「あの場面で粘り強く交渉を続けたからこそ、今回の成果につながったんだね」「新しいアプローチを試してみたその姿勢が素晴らしい」とプロセスや努力を承認する声掛けは、部下の自己承認欲求を育て、挑戦を楽しめる組織文化の基盤となります。

管理職研修でこの科学的根拠を共有することには、大きなメリットがあります。第一に、管理職自身が「なぜ褒め方を変える必要があるのか」を腹落ちして理解できること。感覚的な話ではなく、実験データに基づいた説明だからこそ、忙しい管理職にも納得感を持って受け入れてもらえます。第二に、日常のマネジメントで実践しやすい具体的な行動指針が得られることです。

この研究結果は、管理職研修の設計に直接的な影響を与える重要な知見です。特に注目すべきは、この実験結果が子どもだけでなく大人にも当てはまるという点です。組織行動学の研究でも、「能力にフォーカスしたフィードバック」を受けた社員は新しい挑戦を避ける傾向が強まり、「プロセスにフォーカスしたフィードバック」を受けた社員はイノベーティブな行動が増えるという結果が報告されています。

管理職研修でこの知見を実務に落とし込む際には、具体的な声掛けの例を豊富に提示することが効果的です。たとえば、営業部門であれば「今月のトップセールスだね、才能があるよ」ではなく、「先週のクライアント訪問で、事前にあれだけ綿密な準備をしていたからこそ、この結果につながったんだね」と伝える。開発部門であれば「さすが優秀なエンジニアだ」ではなく、「バグの原因を粘り強く追究し続けた、その諦めない姿勢が品質向上につながった」と伝える。こうした具体例を管理職研修の中で数多く共有することで、管理職は「自分の現場でどう言い換えればよいか」をイメージしやすくなります。

さらに、管理職研修後のフォローアップとして、1ヶ月間「プロセス承認チャレンジ」を設けるのも効果的です。管理職が毎日最低1回は部下のプロセスや努力を承認する声掛けを行い、その内容を記録していくというものです。この習慣化のプロセスを通じて、管理職の声掛けの質は確実に変化していきます。

重要なのは、この変化が管理職自身の「あり方」の変化と連動している必要があるということです。テクニックとして表面的に言い換えるだけでは、やがて部下に見透かされてしまいます。管理職自身が「部下の成長プロセスに心から関心を持つ」という内面の変化を起こすこと。そのためには、管理職自身の自己基盤力を高めるプログラムが不可欠なのです。

管理職研修でドゥエック教授の実験結果を紹介する際に、もうひとつ押さえておきたい概念があります。それは「成長マインドセット」と「固定マインドセット」です。能力を褒められた子どもは「自分の能力は固定されたもの」と考える固定マインドセットに傾き、努力を承認された子どもは「能力は努力によって伸ばせる」と考える成長マインドセットを強化したのです。

管理職研修でこの二つのマインドセットを教えることは、管理職自身の成長にとっても重要です。固定マインドセットの管理職は、自分のマネジメント能力も固定的だと考えるため、部下のフィードバックを脅威として受け止めやすくなります。一方、成長マインドセットの管理職は、マネジメントスキルは経験と学びによって向上すると信じているため、フィードバックを成長の機会として歓迎します。

管理職研修の設計においては、この成長マインドセットを強化するプログラムを意識的に組み込むことが有効です。たとえば、「今期最も成長を実感した場面」を管理職同士で共有し合うセッションを設けたり、「失敗から学んだこと」をオープンに語れる場をつくったりする。こうした取り組みが、組織全体に成長マインドセットを浸透させる原動力となるのです。

管理職研修のプログラム設計においては、科学的根拠に基づくアプローチと、管理職自身の内面的成長を促すアプローチを組み合わせることが理想的です。ドゥエック教授の研究が示す「プロセス承認」の重要性を知識として学んだ上で、管理職自身の自己基盤力を強化するプログラムに取り組む。この二層構造が、知識を「わかる」から「できる」へ、そして「自然にそうなる」へと昇華させる最も確実なルートです。

褒め方ひとつで部下の成長軌道が変わる。大げさに聞こえるかもしれませんが、日常のフィードバックの質的転換が組織変革の出発点であることは、多くの先進企業が実証しています。管理職研修で科学的根拠に基づく「承認の技術」を学んだ管理職が一人でも増えれば、その影響はチーム全体、そして組織全体へと波及していくのです。

褒め方ひとつで部下の成長軌道が変わる。大げさに聞こえるかもしれませんが、日常のフィードバックの質的転換が組織変革の出発点であることは、多くの先進企業が実証しています。管理職研修で科学的根拠に基づく「承認の技術」を学んだ管理職が一人でも増えれば、その影響はチーム全体、そして組織全体へと波及していくのです。

御社の管理職研修に、エビデンスに基づいた「承認の技術」は取り入れられていますか。科学的根拠のあるアプローチこそが、管理職の行動変容を確実に後押しする鍵となるのです。

あなたの組織のマネジメント力を可視化しませんか?

2E Consultingでは、管理職のマネジメント力を多角的に診断できる「無料マネジメント診断」を提供しています。管理職研修の設計や効果検証にぜひお役立てください。

無料マネジメント診断を受ける →

Tetsuro

Tetsuro

株式会社 2E Consulting 代表。中小企業診断士。アメリカ合衆国ニューヨーク州出身。一橋大学社会学部卒。三菱商事にて製鉄用石炭・鉄鉱石のトレーディング・事業開発・投資事業に携わり、インド・ドイツ・シンガポールに9年間駐在。海外駐在において現地人材の育成・組織開発に携わる中で人材育成に興味を持ち、企業向け研修会社に転職、年間2,000人の受講生にビジネススキルを教える。Harvard Business School Program for Leadership Development 修了(2019年)。その後、独立し、中小企業診断士として数多くの企業経営の現場で経営改善に従事している。

コメント

この記事へのコメントはありません。

おすすめ記事

PAGE TOP