はじめに:目標設定をしたのに、組織が動かない理由
「目標設定はちゃんとしている。数値も明確だ。なのに、メンバーの行動が変わらない」——。
こうした悩みを抱える管理職の方は少なくありません。目標設定の「作業」は完了しているのに、組織に推進力が生まれない。なぜでしょうか。
多くの場合、原因は「目標設定から行動までの道筋」が設計されていないことにあります。目的(Why)、戦略(How)、行動計画(What)の三層構造を意識せずに目標設定を行うと、「数字はあるが、何をすればいいかわからない」という状態が生まれてしまいます。
当社の管理職研修では、この三層構造を目標設定の中核フレームワークとして位置づけています。本記事では、目的から行動計画までを一本の線でつなぐ目標設定の技術「Why→How→What」を解説します。
目標設定フレームワークの全体像:「ありたい状態」と「測る指標」の二軸
管理職研修でお伝えしている目標設定のWhy→How→Whatには、各段階に共通する構造があります。それは、「ありたい状態(定性)」と「測る指標(定量)」の二つの面です。
「ありたい状態」だけでは。近づいているのかどうかがわかりません。一方、「測る指標」だけでは、何を目指しているのかが見えません。ありたい状態が方向を示し、測る指標が進捗を確認する。この二つがセットになることで、目標設定は「絵に描いた餅」でも「意味のない数字の羅列」でもなく、実際に組織を動かす力を持つのです。
全体像を整理すると、次のようになります。
- Why(なぜやるのか): ありたい状態=目的、測る指標=KGI
- How(どうやるのか): ありたい状態=戦略・施策の方向性、測る指標=KPI
- What(何をするのか): 具体的な行動計画を、ガントチャートで管理する
FRAMEWORK
Why → How → What 三層構造
EXAMPLE
Why→How→What 目標設定の具体例(製造部門)
| 層 | ありたい状態(定性) | 測る指標(定量) |
|---|---|---|
| Why | 顧客から最も信頼されるパートナーになる | 顧客満足度90点以上 / リピート受注率80% |
| How | 品質管理体制を根本から刷新する | 不良率0.3%以下 / 出荷検査合格率99.5% |
| What | ・毎週月曜に品質データレビュー会議を実施 ・Q1末に検査工程の標準化マニュアルを完成 |
|
目標設定の第一段階:Why——目的を定め、KGIで測る
目標設定の最初のステップは、「なぜやるのか」を定めること、すなわち目的の設定です。
前回までの記事で解説した、Will・Can・Mustの三つの座標軸を使い、組織としての「ありたい姿」を描きます。これが定性的な「目的」です。
目的が定まったら、次にその「測る指標」としてKGI(Key Goal Indicator:最終達成指標)を設定します。KGIとは、目的の達成度を測るためのモノサシです。
たとえば、「顧客から最も信頼されるパートナーになる」という目的を掲げたなら、KGIとして「顧客満足度スコア90点以上」「リピート受注率80%以上」を設定する。この指標が改善していれば、目的に近づいていると判断できるわけです。
管理職研修でお伝えしている目標設定の原則は、まず「ありたい状態」を描き、次に「測る指標」を設定すること。KGIは、ありたい状態を検証するためのモノサシなのです。
目標設定の第二段階:How——戦略と打ち手を絞り込み、KPIで測る
Whyで目的とKGIが定まったら、次は「どうやって達成するか」を考える目標設定のステップです。
Howでは、四つのステップを踏みます。
Step 1:発散 ——ありたい姿に近づくために、「増やすべきこと」と「減らすべきこと」の両面から自由にアイデアを洗い出します。特に「やめること・減らすこと」の視スは見落とされがちですが、足かせになっている慣習を廃止することは、新しいことを始めるのと同等のインパクトがあります。
Step 2:絞り込み ——洗い出したものから、自分たちがコントロールでき、かつインパクトの大きいものを選びます。ここで「選択と集中」を行います。
Step 3:KPI設定 ——選んだ打ち手の効果を測るモノサシとして、KPI(Key Performance Indicator:中間達成指標)を設定します。KGIを構成要素に「分解」していくことで、自分たちの手で動かせる指標を見つけ出し、KPIとします。
Step 4:施策の方向性 ——KPIを動かすためのアプローチを複数検討し、どの方向で攻めるかを決めます。
目標設定の第三段階:What——「明日から動ける」レベルまで具体化する
WhyとHowが定まったら、最後に「具体的に何をするか」を決めます。ここで初めて「行動」が登場します。
KGIもKPIも、「達成指標」であって「行動」ではありません。 行動が生まれるのは、目標設定の最終段階で「誰が・いつまでに・何をするか」を決めたときです。
Whatの設計では、三つのポイントを押さえます。
第一に、タスクをツリー状に分解すること。 「そのためにどうする?」という問いを繰り返し、大きなタスクを具体的なアクションに枝分かれさせていきます。
第二に、スケジュールに20%の余白を持たせること。 計画どおりにいくことのほうが稀です。予期せぬトラブルへの対応バッファとして、余白を確保しておくことで、計画が「実際に回る計画」になります。
第三に、「誰が」を明確にすること。 「チーム全体で取り組む」という表現は、実際には〈誰の責任でもない状態」を生みます。すべてのタスクに責仸者を定めることが、実行力の鍵です。
管理職研修で学ぶ目標設定の全体像:三層構造が揣って初めて機能する
当社の管理職研修では、目標設定のWhy→How→Whatは三つが揣って初めて機能するとお伝えしています。
- Whyだけの目標設定では。理想はあっても具体的に何をすればいいかわからない
- Howだけの目標設定では、なぜその方向なのかという意味が伝わらない
- Whatだけの目標設定では、「やらされ感」が生まれ、状況変化に対応できない
ありたい状態(定性)で方向性と意味を生み出し、測る指標(定量)で進捗を確認し、行動(What)で現実を動かす。 この三層構造こそが、管理職研修で学ぶ目標設定の全体像です。
まとめ:目標設定とは、目的から行動まで一本の線でつなぐこと
Why→How→Whatのフレームワークは、目標設定を「数値を決める作業」から「組織を動かす仕組みの設計」へと転換します。
目的(Why)で方向性を示し、戦略とKPI(How)で焦点を定め、行動計画(What)で実行に移す。この一連の目標設定の流れを、管理職がメンバーに語れること。それが、目標設定を「紙の上のもの」から「生きた仕組み」に変える力になるのです。
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