管理職研修でSTP分析を教えた後、次のステップとして取り上げたいのが「ペルソナ設定」と「インサイト」です。ターゲットが決まっても、それだけでは「ひと塊の消費者群」に過ぎません。生身の人間として顧客を描き出すことで、組織全体が顧客像を共有できるようになります。
ペルソナとは何か:ターゲットを「生身の人間」にする
ペルソナとは、企業が提供する商品・サービスにとって最も重要で象徴的な顧客モデルのことです。より詳しい生活態度や行動、その行動をとる理由、希望や目標、喜怒哀楽までを表現し、具体的な一人の人間を描き出すことに力点があります。
社会科学では「顔のある犠牲者効果」という理論があり、人は大勢のデータより特定の一人のストーリーに心を動かされるとされています。「1,000人の定量調査の結果」よりも「たった1人のフォーカスグループの発言」にリアリティを感じた経験は、多くの管理職が持っているはずです。
ペルソナがもたらす組織的な効果
ペルソナ設定の効果は、マーケティング部門だけにとどまりません。商品開発、営業、カスタマーサポート、さらには経営層まで、全ての関係者が同じ顧客像を共有できるようになります。管理職研修でペルソナ設定を扱う際は、この「部署を超えた共通言語としての効果」を強調することが重要です。
管理職がペルソナを活用できるようになると、チームメンバーへの方針伝達がより具体的になり、意思決定の基準も明確化します。「この施策は我々のペルソナにとって価値があるか?」という問いかけが、組織の判断基準として機能し始めるのです。
インサイト:顧客の「本当の欲求」を見つける
ペルソナを設定した次のステップが、インサイト(洞察)の発見です。業界が成熟化する中で新しい価値を提供するには、生活者自身も自覚していない欲求や思考に対する深い洞察が不可欠です。
「顧客が本当に求めているもの」を掘り下げる
講座では、顧客ニーズの掘り下げ方についてこう解説しています。
製品開発では、つい機能に意識が向きがちです。しかし大事なのは、顧客が本当に求めているもの、つまりニーズと提供価値を掘り下げて考えることです。
「静かな洗濯機」の例では、表面的なニーズ(静かな洗濯機が欲しい)の奥に「家族との週末の時間を増やしたい」という本質的なニーズが隠れていました。この「表面的な欲求」と「本質的な欲求」のギャップを見抜くことこそ、インサイト発見の核心です。
また講座では、BtoBとBtoCの顧客ニーズの違いについても触れています。
BtoBの目的は問題解決。BtoCは問題解決に加えて体験や情緒的価値。この違いを踏まえることが大切です。
BtoB企業の管理職がペルソナを描く際は、顧客企業の担当者だけでなく、その上司、さらにその上の決裁者まで含めた「関与者全体」のニーズを捉える視点が必要です。講座では、BtoBの意思決定には複数の関与者が論理的に関わることが強調されており、ペルソナを個人ではなく「意思決定ユニット」として設計する重要性が示唆されています。
印象的な事例として、高齢者向けカップヌードルの開発があります。高齢者に「食へのこだわり」を聞くと、ほとんどの方が「減塩・カロリーオフなど健康に気を遣っている」と答えます。しかし実際の食行動を観察すると、肉やこってり系を好んで食べている方が多かったのです。この「言っていること」と「やっていること」のギャップこそがインサイトであり、ここから高齢者向けの健康的かつ「リッチ」な商品という新たな価値が生まれました。
インサイトの発見手法:バイアスを壊す
インサイトを発見するための手法の一つは、生活者が感じているトレードオフ(二律背反)を特定し、それを破壊することです。「aを選ぶとbは諦めなければいけない」という暗黙の前提を覆すことで、革新的な価値提案が生まれます。
USBフラッシュメモリの開発はその好例です。当時は「触れるもの(フロッピーディスク等)はデータ容量が小さい」「大容量のもの(インターネット)は触れない」というトレードオフがありました。このバイアスを壊し、「触ることができる大容量メモリデバイス」というインサイトが生まれたのです。管理職にとって、自部門の事業における暗黙のトレードオフを見抜く力は、イノベーションを推進する上で不可欠な能力です。
管理職研修での実践方法
管理職研修にペルソナとインサイトを取り入れる際は、実践的なワークショップ形式が効果的です。まずターゲットの生活態度、価値観、悩みや喜びを40項目以上書き出させ、次に自社商品の特徴を同じく40項目以上列挙させます。そして、それらの特徴を全てペルソナの課題解決に結びつくベネフィットに転換する作業を行います。
このプロセスを通じて、管理職は顧客視点で自社の商品・サービスを捉え直すことができ、現場での意思決定に新たな視点を持ち帰ることができます。成熟社会において新しい切り口やインサイトが価値の源泉となることを、体験的に学べるプログラムを設計しましょう。
経理や人事にも「ペルソナ」がいる ―「後工程=顧客」のインサイトを掘る
ペルソナ設定やインサイト発見は、外部の消費者に対してだけ使う手法ではありません。マーケティングの本質は顧客のニーズを顧客目線で理解すること。社内の後工程を「顧客」と捉えれば、全ての部署でこのアプローチが活きてきます。
たとえば人事部にとっての重要なペルソナの一人は「プレイングマネージャーとして多忙を極める40代の課長」かもしれません。「研修に参加する時間がない」と言いながらも、部下の育成に悩みを抱えている。この「言っていること」と「本当に求めていること」のギャップにこそ、インサイトがあります。
経理部が「決算レポートを経営層に提出する」という業務においても、「経営層は数字そのものではなく、次のアクションに繋がる示唆を求めている」というインサイトに辿り着ければ、レポートの価値は飛躍的に高まります。
マーケティング視点は、全管理職が持つべき基本的な思考フレームワークです。管理職研修でペルソナとインサイトを教える際には、受講者に「自部署の後工程にいる人物のペルソナ」を描かせるワークを取り入れましょう。営業部以外の管理職にこそ、この演習が強い気づきを与えます。
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