2E式管理職養成プログラム

「自己基盤力」をベースに

管理職を“罰ゲーム”にしないための、マネジメント再設計。

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管理職研修で伝えたい「支援型マネジメント」|全日本三度優勝コーチの指導から

先日、久しぶりに母校の大学剣道部の稽古に参加してまいりました。現役を離れてから、ずいぶんと時間が経ちます。それでも防具をつけて道場に立つと、汗の匂い、竹刀の音、後輩たちの気合い──学生時代の感覚が、不思議と身体の奥から蘇ってまいります。その稽古の中で、ひときわ違う“気”を放っておられる方がいらっしゃいました。

最近、母校剣道部のコーチに就任された、警視庁の内村良一先生です。

日本に一人の“日本一”を、三度

内村先生は、私と同い年。そして剣道界で知らぬ者のいない、全日本剣道選手権三度優勝という途方もない記録の持ち主です。

剣道には、柔道と違って階級制がありません。体格差を超えて、ただ一つの「日本一」を決める競技です。つまり、日本一になれるのは一年にひとりだけ。それを三度も制された方が、なぜか母校のコーチに就いてくださっている。現役時代の私たちからすれば、雲の上どころか、そもそも別の世界の方です。

「きちんと目を向けて、ほめる」ということ

稽古のご指導の内容が素晴らしいのは、もはや言うまでもありません。しかし、私が本当に感銘を受けたのは、そこではありませんでした。

学生のちょっとした成長に、きちんと目を向け、ポジティブなフィードバックをされる姿勢。ここに、強く心を打たれたのです。

内村先生のレベルからすれば、学生はほぼ素人に等しいはずです。技術のギャップは、私たち凡人の想像を絶するほど離れています。それでも先生は、学生と同じ目線に立ち、分かりやすく丁寧にご指導なさいます。そして少しでも上達すれば、それをすぐに見つけて、言葉にして返してくださるのです。

ここには、実は深い学問的な裏付けがあります。エドワード・デシとリチャード・ライアンが提唱した自己決定理論(Self-Determination Theory)では、人の内発的動機づけを支える要素として「自律性」「有能感」「関係性」の三つが挙げられています。内村先生のご指導は、学生に対して「あなたはできるようになる」という有能感を育み、同じ目線で向き合うことで関係性を築いておられる。まさに内発的動機づけの理論を、道場という現場で体現されているのです。

私が管理職研修で「指示・命令型から支援型マネジメントへ」とお伝えしているのも、まったく同じ背景からです。外発的な圧力で人を動かしても、その場しのぎの行動しか生まれません。持続的な成長を促すのは、いつも「内側から動きたくなる状態」を整えることなのです。

「名選手、名伯楽にあらず」を覆すもの

昔から「名選手、必ずしも名伯楽にあらず」と言います。プレイヤーとして一流でも、指導者として一流とは限らない、という意味です。

しかし内村先生は、ご自身で他競技の指導者とも積極的に交流され、コーチングや指導方法を学び続けておられるとのことでした。

このお話を伺って、深く腑に落ちました。天賦の才や過去の実績だけで指導されているのではなく、「伯楽」としてのご自身を、今も磨き続けておられるのです。

組織心理学の大家エドガー・シャインは、支援のあり方を「専門家モード」「医師−患者モード」「プロセス・コンサルテーション」の三つに分類しました。多くの元トップ選手は、つい「専門家モード」で自分の正解を教えようとしてしまいがちです。しかし内村先生のご指導は、相手の文脈に寄り添いながら気づきを引き出すプロセス・コンサルテーションに限りなく近い。これは、学び続ける謙虚さがあってこそ到達できる指導のあり方だと感じました。

「失敗の反対は、何もしないこと」

稽古後のお話の中で、もう一つ強く印象に残った言葉がありました。

失敗から学ぶ姿勢が、何より大切です。

これは、私が管理職研修で繰り返しお伝えしていることと、まったく同じでした。

私はよく、受講生の方にこう問いかけます。「失敗の反対は、何だと思いますか?」たいていの方は「成功」とお答えになります。でも、私はこう続けます。

失敗の反対は“成功”ではなく、“何もしないこと”です

挑戦すれば、成功か失敗のどちらかは必ず手にできます。けれど、挑戦しなければ、そのどちらも得られません。学びも、成長も生まれないのです。

スタンフォード大学のキャロル・ドゥエック教授が提唱するグロース・マインドセット(成長思考)は、まさにこの考え方に重なります。能力を固定的なものと捉える「フィックスト・マインドセット」の持ち主は、失敗を「自分の限界の証拠」と受け取ってしまいます。一方、グロース・マインドセットの持ち主は、失敗を「まだできていないだけ(Not Yet)」と捉え、次の学びの材料として扱います。

さらに、ハーバード・ビジネス・スクールのエイミー・エドモンドソン教授が提唱する心理的安全性が組織に根づいていなければ、人は失敗を恐れて挑戦できません。内村先生が学生に送るポジティブフィードバックは、技術指導である以上に、「挑戦して失敗しても大丈夫」という安全な場を作り出している。私はそう受け取りました。

日本一を三度取られた方が、「失敗から学ぶ」ことを繰り返し語られる。ここにこそ、強さの本質があるのだと思います。

剣道とビジネスの本質は、同じ

帰り道、防具袋を担ぎながら、ずっと考えておりました。

内村先生のご指導を通じて心を動かされた三つのこと──学び続ける謙虚さ失敗を恐れず学びに変える姿勢、そして相手と同じ目線で小さな成長を言葉にされる姿勢。これらは、私が管理職研修で基本構造として据えている「マインド → 考え方 → 行動」という三層に、見事に対応していたのです。

管理職育成の三層構造

  • 行動(他者影響力):相手を尊重し、対話を通じて人を動かす力
  • 考え方(課題解決力):物事の構造を捉え、本質的な課題と向き合う思考力
  • マインド(自己基盤力):感情や状況に振り回されず、“あり方”を整える力

※土台(マインド)から積み上がる三層構造

この三層は、どれか一つだけで成立するものではなく、下から順に積み上がっていく構造を持っています。土台である「マインド(自己基盤力)」が整っていなければ、どれほど優れた考え方や行動様式を身につけても、現場で生きた力にはなりません。

内村先生の学び続ける謙虚さは、まさにマインド=自己基盤力そのものです。どれほどの実績を積まれても、自分を「完成された存在」とはせず、他競技からも貪欲に学ぼうとされる。ここに、揺るぎない自己基盤があります。

失敗を学びに変える姿勢は、考え方=課題解決力の出発点です。失敗を「限界の証拠」ではなく「次への材料」と捉え直す思考こそが、あらゆる課題解決の起点となります。

そして学生と同じ目線に立ち、小さな成長を見つけて言葉にされるご指導は、行動=他者影響力の理想形と言えるでしょう。相手を変えようとする前に、相手の中にある可能性に目を向ける──その姿勢こそが、結果として人を動かしてまいります。

道場の本質と、ビジネスの現場の本質。表面に見える世界はまったく違うのに、その一番深いところでは、きっと同じものでつながっている。そう確信させてくれた、貴重な稽古の一日でした。

Tetsuro

Tetsuro

株式会社 2E Consulting 代表。中小企業診断士。アメリカ合衆国ニューヨーク州出身。一橋大学社会学部卒。三菱商事にて製鉄用石炭・鉄鉱石のトレーディング・事業開発・投資事業に携わり、インド・ドイツ・シンガポールに9年間駐在。海外駐在において現地人材の育成・組織開発に携わる中で人材育成に興味を持ち、企業向け研修会社に転職、年間2,000人の受講生にビジネススキルを教える。Harvard Business School Program for Leadership Development 修了(2019年)。その後、独立し、中小企業診断士として数多くの企業経営の現場で経営改善に従事している。

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