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【管理職研修】MBOの”失われた半分”——目標設定から抜け落ちた「Self-Control」とは

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はじめに:MBOは「部下を管理する制度」ではない

MBO(目標管理制度)は、多くの日本企業で採用されている評価・マネジメントの仕組みです。期初に目標設定を行い、期末にその達成度をもとに評価する——。このサイクルを、当たり前のものとして運用されている方がほとんどでしょう。

しかし、MBOが本来どのような理念のもとに構想されたかをご存じでしょうか。

実は、ドラッカーがMBOを提唱した際の正式名称には、日本で広まった「目標管理制度」という訳語からは完全に抜け落ちてしまった、最も重要な要素が含まれていました。

当社の管理職研修では、このMBOの本来の理念に立ち返ることを、目標設定の基盤として重視しています。本記事では、日本企業で歪められてしまった目標設定と目標管理のあり方を見直すヒントを提供します。

ドラッカーが定義したMBOの正式名称

ドラッカーがMBOを定義した際の正式名称は、次のとおりです。

Management by Objectives and Self-Control
(目標と自己統制によるマネジメント)

注目すべきは、「and Self-Control」の部分です。

日本語で「目標管理制度」と訳されたとき、この最も本質的な要素が抜け落ちてしまいました。ドラッカーが意図したMBOとは、上司が部下を管理する制度ではありません。部下が自ら主体的に目標設定を行い、その達成に向けて自分自身を律する——つまり「自己統制」する仕組みだったのです。

日本企業で目標設定はどう歪められたのか

日本企業における「失われた30年」の間に、MBOにおける目標設定は大きく変質しました。

終身雇用と年功序列の崩壊のなかで、多くの企業が「成果主義」の名のもとにMBOを導入しました。しかし、その実態は、目標設定を厳格に管理し、人件費を抑制するためのツールとしての運用でした。

その結果、何が起きたか。

目標設定はノルマと化しました。 部下は未達を恐れ、安全圏の目標しか設定しなくなりました。挑戦的な目標設定をすれば未達のリスクが高まる。それならば、確実に達成できる低い目標を置いたほうが評価上は有利——。このような合理的判断が、組織全体に広がりました。

上司は「監視者」になりました。 進捗を厳しく管理し、期末には「達成率」という数字だけで人を評価する。部下との対話は「報告の場」に堕し、支援や育成の機能は失われていきました。

メンバーは萎縮しました。 本来「人を活かす」ための仕組みが、「人を萎縮させる」装置に変わってしまったのです。

管理職研修で問い直す「評価制度」の本質

当社の管理職研修では、もう一歩踏み込んでこう問いかけます。

そもそも、「評価制度」とは何のためにあるのでしょうか。

すべての企業はスタートアップから始まります。従業員が数名の頃は、社長が一人ひとりを見て、直感的に報酬を決めていたはずです。組織が大きくなるにつれて、それでは立ちゆかなくなり、仕組みが必要になった。それが評価制度の出発点です。

しかし、ここに大きな誤解が生まれました。

「評価制度」とは、「評価するため」の制度ではないのです。

人は、他人からの評価に振り回されると、外発的な動機づけに依存するようになります。「上司に認められたい」「評価を下げたくない」——。こうした動機は短期的には行動を促しますが、長期的には主体性を奪い、創造性を抑制します。

ドラッカーが提唱した「人を活かし、人が活かされる組織」という理念と、「人を評価する制度」。この二つは、実は根本的に矛盾しているのです。

主体的な目標設定がもたらす内発的動機づけ

ドラッカーが「Self-Control(自己統制)」を重視した理由は、ここにあります。

自ら目標設定を行い、自律的に動くとき、その動機づけは外側からの評価ではなく、内側からの意志から生まれます。

「この目標を達成したい」と自分で目標設定をした人と、「この目標を達成しなければならない」と言われた人。同じ数値目標であっても、その取り組み方には天と地ほどの差があります。

前者は困難に直面しても創意工夫を凝らし、後者は困難を回避する方向に動く。前者は目標設定した内容を「自分の挑戦」と捉え、後者は「やらされるノルマ」と感じる。この違いが、個人の成長と組織の成果に、大きな差をもたらすのです。

管理職研修が提唱する管理職の新しい役割

MBOの本来の姿に立ち返ったとき、管理職の役割は根本的に変わります。

歪められたMBOにおける管理職の役割は、「目標設定を行い、進捗を管理し、達成率で評価する」ことでした。

本来のMBOにおける管理職の役割は、「部下が主体的に目標設定を行い、自律的に行動できるよう支援する」ことです。

具体的には、次のような関わり方が求められます。

組織としての期待(Must)を明確に伝えたうえで、部下自身の意志(Will)と強み(Can)を丁寧に引き出す。そして、この三つが重なる部分に、部下自身が目標を見出せるよう対話を重ねる。

目標設定後も、進捗を「監視」するのではなく、目標達成に向けた障害を取り除き、必要なリソースを提供し、励まし、承認する。つまり、部下が「自己統制」できる環境を整えることが、管理職の本来の役割なのです。

当社の管理職研修では、この「管理者から支援者へ」の転換を、目標設定の技術と合わせて実践的に学んでいただいています。

まとめ:管理職研修で学ぶ、MBOの「失われた半分」

MBOの正式名称に含まれる「Self-Control」は、単なる付記ではありません。ドラッカーの思想の核心そのものです。

目標設定を「人を管理する仕組み」から「人が自ら動く仕組み」へと転換すること。それは、MBOの”失われた半分”を取り戻す営みに他なりません。

この転換は、制度の変更だけでは実現できません。管理職一人ひとりが、「管理者」から「支援者」へと自らの役割認識を変えていくことが不可欠です。

まずは次の1on1で、目標設定について部下と対話してみてください。「この目標は、あなた自身が達成したいものですか?」——この一言が、変化の始まりになるかもしれません。

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Tetsuro

Tetsuro

株式会社 2E Consulting 代表。中小企業診断士。アメリカ合衆国ニューヨーク州出身。一橋大学社会学部卒。三菱商事にて製鉄用石炭・鉄鉱石のトレーディング・事業開発・投資事業に携わり、インド・ドイツ・シンガポールに9年間駐在。海外駐在において現地人材の育成・組織開発に携わる中で人材育成に興味を持ち、企業向け研修会社に転職、年間2,000人の受講生にビジネススキルを教える。Harvard Business School Program for Leadership Development 修了(2019年)。その後、独立し、中小企業診断士として数多くの企業経営の現場で経営改善に従事している。

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