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評価とは何か──「裁定」から「成長支援」への転換

SERIES|評価者の旅 ── 裁定から成長支援へ、管理職研修10講 第2回

「評価」と聞いて、最初に浮かぶ言葉は何ですか。管理職研修の現場で同じ問いを投げると、出てくるのはだいたい「査定」「ランクづけ」「人事考課」「賃金決定」「S・A・B・C」──。どれも間違いではないのですが、もしこのリストだけで「評価とは何か」が言い尽くされているとしたら、評価面談がしんどいのは当然です。

人を順位づけるための儀式を半年に一度行うのですから、互いに身構えるのも、終わったあと疲れるのも、無理はありません。本記事では、評価の意味をいったん根っこから問い直してみたいと思います。「評価とは、何のためにあるのか」──この一問を、立ち止まって考えるところから始めましょう。

マネジメントの目的に立ち戻る

評価について語るとき、多くの議論は「どうやって評価するか」という方法論から始まります。けれども、方法論の前に置くべき問いがあります。評価は、何のためにあるのか──。目的が定まらないまま方法論を磨いても、便利な道具をでたらめに使っているのと変わりません。

評価は、マネジメントの一部です。だとすれば、評価の目的もまた、マネジメントの目的の延長線上にあるはずです。私たち2E Consultingでは、マネジメントを次のように定義しています。

マネジメントとは、人を介して、長期的に組織の成果を最大化するための技術である。

この定義は、二つのことを言っています。一つは、マネジメントは「人を介して」行うということ。人を駒として動かすのではなく、人の力を引き出すことで成果を生む営みだ、ということです。もう一つは、見るべきは「長期的な成果」だということ。今期の数字だけを最大化して、来期以降に人が辞めていくような仕組みは、マネジメントとは呼びません。

この定義に評価を重ねると、評価の目的は自然と一つに収斂します。

評価とは、人を活かし、組織の長期的な成果を最大化するための仕組みである。

「裁定」のためではなく、「成長支援」のため。「過去の査定」のためではなく、「未来の成果」のため。これが評価の本質です。管理職研修で扱う評価者育成の出発点は、まずこの一点に立ち戻ることにあります。

「裁定する人」と「成長させる人」

ここで、評価者としての立ち位置を、二つの言葉で対比してみます。

裁定する人 成長させる人
過去の出来事をジャッジする 未来の可能性を一緒に描く
点数を告げることが仕事 気づきを引き出すことが仕事
部下の他己承認欲求を強める 部下の自己承認を引き出す
面談は通告の場 面談は対話の場
終わると関係が硬くなる 終わると関係が深まる

頭ではわかっていても、実際の評価面談で気を抜くと、左側に滑り落ちてしまう──これは経験のある管理職ほど身に覚えがあるのではないでしょうか。なぜ滑り落ちるかというと、評価制度そのものが「裁定する装置」として設計されている部分があるからです。提出する書類は点数欄から始まりますし、人事部から求められる作業も「期日までに評価を確定させること」です。

だからこそ、評価者の側に意志が必要になります。制度の慣性に流されたら、面談は通告で終わります。流されないために、評価の目的を自分の言葉で握り直す必要があるのです。

「過去」を見るのか、「未来」を見るのか

もう一つ、評価のスタンスを大きく分ける視点があります。面談で語っている時間の、過去と未来の比率です。

形骸化した評価面談は、時間の8〜9割が「過去」に費やされます。「ここはこうだった」「あの数字が足りなかった」「あの行動はどうだったのか」。査定の根拠を説明するために、過去を細かく振り返ることになります。部下は反論する材料を頭の中で必死に探し、上司は説得材料を並べる──気づけば、来期の話をする時間がほとんど残っていません。

機能する評価面談は、逆です。過去を確認する時間は最小限にして、「ここから先、どう育っていくか」「来期、何に挑むか」を語る時間を多めに取ります。過去の出来事は、未来を語るための素材にすぎません。「この半年でできたこと、できなかったこと」を整理するのは、「だから来期はこう動こう」という結論にたどり着くためです。

部下が面談を終えて、前を向いて部屋を出ていくかどうか。これが、評価面談が裁定で終わったか、成長支援になったかを判定する最もわかりやすい指標です。

今日できる、自分の評価運用の点検

ここまで読んでくださった方に、5分でできる点検を提案します。直近の評価面談を一つ思い出して、次の問いに答えてみてください。

5分でできるワーク

  1. その面談で語った時間のうち、過去の話と未来の話の比率はどれくらいでしたか?
  2. 部下は面談を終えたあと、前を向いていたように見えましたか?それとも、表情が硬かったですか?
  3. もしもう一度同じ面談ができるなら、どこに時間を増やし、どこを減らしたいですか?

この三つの問いに正直に答えると、自分の評価運用が「裁定」寄りなのか「成長支援」寄りなのかが、けっこう鮮明に見えてきます。

評価者の役割は、部下を裁く人ではなく、部下を成長させる人です。役割の置き場所を変えるだけで、面談前の準備も、当日の話し方も、終わったあとの振り返り方も、すべて変わっていきます。

NEXT — 第3回

次回は、それでも評価が形骸化してしまうときに何が起きているのか──現場でよく見る三つの構造的な落とし穴を、具体的に分解していきます。


Tetsuro

Tetsuro

株式会社 2E Consulting 代表。中小企業診断士。アメリカ合衆国ニューヨーク州出身。一橋大学社会学部卒。三菱商事にて製鉄用石炭・鉄鉱石のトレーディング・事業開発・投資事業に携わり、インド・ドイツ・シンガポールに9年間駐在。海外駐在において現地人材の育成・組織開発に携わる中で人材育成に興味を持ち、企業向け研修会社に転職、年間2,000人の受講生にビジネススキルを教える。Harvard Business School Program for Leadership Development 修了(2019年)。その後、独立し、中小企業診断士として数多くの企業経営の現場で経営改善に従事している。

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