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管理職こそ「答え」を出し切る覚悟を|管理職研修コラム

全7回シリーズ『論理的コミュニケーション力を磨く』 第3回:答える力

管理職こそ「答え」を出し切る覚悟を

管理職研修・マネジメント研修コラム|全7回シリーズ

山本哲郎 / 株式会社2E Consulting 代表取締役

 前回のコラムで、「とらえる力」、つまり論点を正しく設定する力の重要性についてお伝えしました。今回は、その論点に対して「答える力」がいかに重要であるか、そして、管理職がこの力をいかに磨くべきかについて、掘り下げていきます。

 実は、この「答える力」こそが、管理職としてのあなたのリーダーシップの質を最も如実に表す力なのです。なぜなら、部下たちは管理職がどのように「答え」に向き合うかを見て、自分たちも答えを出す覚悟を決めるからです。

なぜ部下は「答え」を出さないのか

 「うちの部下たちは、自分で答えを出さない」「いつもアドバイスを求めてくる」「主体性がない」。こうした嘆きを、多くの管理職から聞きます。確かに、そういった部下の姿勢は問題かもしれません。しかし、その原因を、部下の個性や能力だけに求めるのは、危険です。

 実は、部下たちが「答え」を出さないのは、その風土が管理職自身によって作られている可能性が高いのです。

 どういうことか。部下が試行錯誤しながら答えを考え、それを提案した時のことを思い出してください。あなたは、その答えをどのように受け取ったでしょうか。「完璧ではない」「甘い」「そこまで考えてないのか」という反応をしていなかったでしょうか。あるいは、部下が提案した答えを受け入れず、自分の答えに修正させていなかったでしょうか。

 こういった対応を繰り返していると、部下たちはメッセージを受け取ります。「この上司は、自分たちが出す答えを受け入れるつもりはない。だったら、答えを出す努力をするより、上司の顔色をうかがって、上司が望む方向を推測する方が得策だ」と。

部下が答えを出さないのは、答えやすい環境が存在しないからです。

 管理職自身が、その環境を作っていることに気づくことが、変化の第一歩です。

 ある金融機関の部長の例があります。その部長は「部下たちの主体性が低い」という悩みを持っていました。実際に部門内の会議を観察してみると、部下たちは提案をほとんどしていません。いつも部長が議論をリードし、判断を下していました。

 話を聞いてみると、実は数年前までは、部下たちからもいろいろな提案が出ていたのだそうです。しかし、部長が何度も「それはダメだ」「そんなことじゃない」と否定してきたうち、だんだん提案が出なくなったのです。つまり、部下たちは「答えを出しても否定されるなら、出さない方がいい」と学習してしまったわけです。

曖昧耐性を高めるとは

 では、どのようにして「答える力」を磨けばいいでしょうか。その鍵となるのが「曖昧耐性」です。これは、完全ではない情報の中で、決定や判断を下す力を指します。

 ビジネスの現場では、完全で確実な情報が揃うまで待つ、ということはありません。顧客のニーズは日々変わり、市場は刻々と動きます。その中で、今出し得る「最善の答え」を導き出す力が、管理職には不可欠なのです。

 注意すべき点は、「曖昧耐性を高める」ということが「いい加減な答えを出す」ことではないということです。むしろ、逆です。限られた情報の中で、自分たちが今できる最大限の検討を加え、「今のところ、これが最善だ」という覚悟を持つことなのです。

 例えば、新製品の市場投入時期を決めるとしましょう。理想を言えば、完全な市場調査が終わり、製品開発も100%完了してから、投入時期を決めたいところです。しかし、現実はそうではありません。市場調査がまだ半ば、製品開発も80%程度の状態で、「いつ市場に投入するか」という決定を迫られるのです。

 その時、いくつかの選択肢があります。第1は「完全な情報が揃うまで待つ」という選択です。しかし、待っている間に競合企業が先に市場に参入するかもしれません。第2は「直感で決める」という選択です。しかし、これでは責任が持てません。第3は「今持っている情報で、最大限の検討をした上で、この判断が最善だという覚悟を持って決める」という選択です。曖昧耐性を高めるということは、この第3の選択肢を、自信を持ってできるようになることなのです。

限られた情報の中で最善の答えを導き出す曖昧耐性の概念を示すイラスト
曖昧耐性を高め、限られた情報から最善の答えを導き出す

管理職が答えを否定する風土が生まれる原因

 ここで、一つの問題が浮かび上がります。なぜ管理職は、部下が出した答えを否定してしまうのでしょうか。それは、多くの場合、管理職自身が曖昧耐性を持っていないからです。

 管理職の立場になると、自分たちの判断がチーム全体に影響することへのプレッシャーが生まれます。「間違った判断をしたらどうしよう」という不安感です。その不安を払拭しようとして、つい「完璧な答え」を求めてしまうのです。

 しかし、その期待は、現実的ではありません。完璧な答えなど、存在しないのです。あるのは「今出し得る最善の答え」だけです。その「最善の答え」が、たとえ完璧ではなくても、それを受け入れ、その答えが間違っていたときに軌道修正するという覚悟が必要なのです。

 実は、このプロセス自体が、部下たちに対する最良の教育になるのです。完璧さを求めるのではなく「限られた情報で判断する」ことの重要性を、身をもって示すことになるからです。

管理職が「完璧な答え」を求めれば、部下たちも完璧さを求めるようになります。

 その結果、誰もが答えを出せず、組織全体が停滞してしまうのです。

答えやすい環境を作ること

 では、具体的に「答えやすい環境」とは、何でしょうか。それは、以下の3つの要素で構成されます。

 第1は「安心感」です。間違った答えを出したからといって、厳しく罰するのではなく、そこから学ぶ機会として捉える姿勢です。実は、失敗から学ぶほど、効率的な学習はありません。部下たちが安心して答えを出せる環境は、組織全体の学習速度を高めるのです。

 第2は「期待値の明確化」です。前回のコラムで「とらえる力」について述べましたが、部下たちがどの程度の質の答えを求められているのか、明確に伝わっていることが重要です。「完璧な答え」を求めているのか、それとも「今の段階での最善の答え」で構わないのか。その期待値が明確であれば、部下たちは、それに応じた努力ができます。

 第3は「答えの評価基準の明示」です。どのような観点から答えが評価されるのか。「正確性」「創意工夫」「実現可能性」など、複数の観点があるかもしれません。あるいは、「今のこの状況では、実現可能性を重視する」というように、状況によって変わることもあります。その基準が明確であれば、部下たちは、自分たちの答えの強みと弱みを自覚した上で、提案できるようになります。

上司の役割を再定義する

 ここで、重要な問題提起があります。管理職の役割とは、何でしょうか。多くの管理職は「YESかNOかを決めること」だと思っています。部下が提案した答えに対して、採用するか不採用か、その判断を下すことが自分たちの役割だと。

 しかし、実際には、その理解は不完全です。管理職の役割は、むしろ「部下が答えを出し切れる環境を作ること」なのです。

 具体的には、以下のようなプロセスが考えられます。第1に、部下が答えを出す時に、その過程で助言や示唆を与えることです。「その考え方もあるが、こういう視点も忘れずに」という指導を通じて、部下の考えを深める手助けをするのです。第2に、部下が出した答えに対して「何が良かったか」「どこが不足していたか」という、建設的なフィードバックを与えることです。第3に、その答えが採用されなかった場合でも「君の答えは悪くなかった、ただ経営環境の変化で、別の判断が必要になった」というような、説明責任を果たすことです。

 こうしたプロセスを通じて、部下たちは「上司は自分たちが出した答えを大切にしている」というメッセージを受け取ります。そして、次に同じ場面が訪れた時に、また答えを出そうと試みるのです。

部下が安心して答えを出せる環境づくり(安心感・期待値の明確化・評価基準の明示)を示すイラスト
答えやすい環境をつくる3つの要素

限られた情報から答えを導き出すテクニック

 では、実際に「限られた情報から答えを導き出す」には、どのようなテクニックが必要でしょうか。以下の3つのステップをお勧めします。

 第1ステップは「持っている情報を整理する」ことです。完全ではないという自覚はありつつも、今持っている情報の中に、実は有用なデータが隠れているかもしれません。持っている情報を、できるだけ客観的に、かつ組織的に整理し、何が確実で、何が不確実かを見分けるのです。

 第2ステップは「不足している情報を認識する」ことです。完全な情報は得られないとしても、「あと、これが分かれば、より良い答えが出るのに」という不足を自覚することは重要です。その不足を認識した上で「今、短時間で得られる情報は何か」を検討するのです。

 第3ステップは「今出し得る最善の答えを導き出し、その仮説性を明示する」ことです。「現在の情報では、こういう答えが最善だと考えます。ただし、これは〇〇という前提条件に基づいているため、その条件が変われば、答えも変わる可能性があります」というように、その答えの前提条件と仮説性を明確にするのです。

 このテクニックは、部下にとっても、組織全体にとっても、非常に有用です。なぜなら、それにより「意思決定のプロセス」が可視化され、後々、軌道修正が必要になった際にも、どこを修正すればいいかが明確になるからです。

答える覚悟が組織に与える影響

 管理職が「答え」を出し切る覚悟を持つことの影響は、個別のプロジェクトや判断にとどまりません。それは、組織全体のマインドセットを変えるのです。

 ある企業では、経営方針の会議の場で、常に経営陣が議論に時間をかけ、完璧な結論を求めようとしていました。その結果、何も決まらない状態が続きました。そこで経営姿勢を変え「完璧ではなくても、今の段階での最善の答えを決定する」という方針に転換しました。

 その変化は劇的でした。意思決定が早くなり、チーム全体が同じ方向を向いて動けるようになったのです。さらに、部下たちからも「こういう案はどうか」という提案が増え、組織全体の創意工夫が活発化しました。これは、経営陣が「答える覚悟」を示したことで、部下たちも「答えを出す覚悟」を持つようになったからです。

 マネジメント3つの力の中で「他者影響力」が重要だとお伝えしてきました。その他者影響力の源泉は、実は「限られた情報の中で、覚悟を持って答えを出す管理職の姿勢」にあるのです。その姿勢が、部下たちに「自分たちも答えを出す価値がある」というメッセージを伝えるからです。

完璧な管理職ではなく、部下たちの答えを受け入れる覚悟を持つ管理職。

 それが、部下たちに最も強い影響を与えるのです。

実践のステップ

 「答える力」を磨くために、以下の3つのステップをお勧めします。

 第1ステップは「次の判断で、覚悟を示す」ことです。完璧な情報が揃うまで待つのではなく、今出し得る最善の答えで判断する。その判断を「完璧ではないが、これが最善だ」という言葉で明確にするのです。

 第2ステップは「部下の答えに対する自分の反応を記録する」ことです。部下から提案があった時に、自分がどのような反応をしているか。否定から入っていないか。反応パターンを自覚することで、改善のきっかけが生まれます。

 第3ステップは「答えが間違っていたときの軌道修正プロセスを示す」ことです。「前回の判断は間違っていたが、その時点では最善の判断だった。そして、今得られた新しい情報に基づいて、こう修正する」というプロセスを、部下たちの前で示すのです。これが、組織全体の「曖昧耐性」を高める、最高の教育になるのです。

 「答える力」とは、完璧さを求める力ではなく、覚悟を持つ力です。その覚悟が、部下たちのモチベーションを引き出し、組織全体の行動力を高めるのです。

管理職研修では、受講者自身が「答えを出す」体験を通じて、この曖昧耐性を鍛えていきます。

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Tetsuro

Tetsuro

株式会社 2E Consulting 代表。中小企業診断士。アメリカ合衆国ニューヨーク州出身。一橋大学社会学部卒。三菱商事にて製鉄用石炭・鉄鉱石のトレーディング・事業開発・投資事業に携わり、インド・ドイツ・シンガポールに9年間駐在。海外駐在において現地人材の育成・組織開発に携わる中で人材育成に興味を持ち、企業向け研修会社に転職、年間2,000人の受講生にビジネススキルを教える。Harvard Business School Program for Leadership Development 修了(2019年)。その後、独立し、中小企業診断士として数多くの企業経営の現場で経営改善に従事している。

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