管理職研修What型思考Why型思考
人間はなぜ「What型思考」に陥るのか~What型思考の落とし穴~
管理職研修で最初に伝えるべきことは、「What型思考に陥るのは自然なことだ」という事実です。人間はその性質上、目の前に見えているものに反射的に対処しようとします。問題が起きたら即解決策(WHAT)に飛びつき、「なぜ(WHY)」を問う前に行動してしまうのです。
研修では、これを「What型思考の罠」と表現しています。動物を捕まえる「罠」ははまりやすく、抜け出しにくいのです。
これは短期的には効率的に見えます。しかし、長期的には「同じ問題が何度も繰り返される」「打ち手がバラバラで一貫性がない」「部下が目的を理解せずに動く」という弊害を生み出します。管理職研修でこの問題を正面から取り上げることで、参加者は自分のマネジメントスタイルを客観的に見直すことができます。
部下のWhat型思考を助長する「管理職のWhat型指示」
What型思考が組織に広がる原因のひとつが、管理職自身の「What型指示」です。管理職研修の場では、次のような会話のパターンに心当たりはないか、参加者に問いかけます。
“営業のアポ数が少ないから、来週から1日5件テレアポしろ”
“競合が新機能を出したから、うちもすぐに同じ機能を追加しろ”
“研修に参加させるから、来月全員で受けてこい”
これらは典型的なWhat型指示です。「なぜアポ数を増やすのか」「なぜ競合と同じ機能が必要なのか」「なぜ研修なのか」というWHYが欠けているため、部下は「言われたからやる」という受け身の姿勢になります。
そして恐ろしいのは、このWhat型指示を受け続けた部下が、自分が管理職になったときにも同じようにWhat型指示をするようになることです。組織にWhat型文化が根付いてしまいます。管理職研修でこの連鎖を断ち切ることが求められます。
部下だからこそ陥りやすい「What型思考の罠」
若い時は、どうしても「やること」=WHATが求められます。また、WHATをひたすらこなして頑張っていると、若いうちは評価されやすいものです。上司であるあなたも、ひたむきに頑張っている若者を見て「よく頑張っているな」と好意的な目で見るのではないでしょうか。もちろん、若いうちに量をこなすことは大切です。
でも、目的=WHYが見えないなかで頑張り続けると、いつしか疲弊します。そして、目的を踏まえていないWHATでは、だんだん結果が出なくなります。気づいた時には、What型思考が身に付き、長期的な目線で考えられなくなっている——これが「What型思考の罠」の怖さです。
もし部下が「What型思考の罠に陥っているな」と気づいたら、ひとこと「それって、何のためだっけ?」と問いかけてみてください。
What型思考 vs Why型思考——場面で使い分けることが鍵
管理職研修で大切なのは、「What型が悪でWhy型が善」という単純な二項対立ではありません。やることが決まっている場合、あるいはすぐ動かなければならない場合は、What型思考で即行動することが正解です。思考の使い分けは「重要度×緊急度」のマトリクスで整理するとわかりやすくなります。
- 重要×緊急(例:重要顧客からのクレーム):まずWhat型思考で即処置。ただし処置のままでは再発するため、再発防止策はWhy型思考で根本から対策する。
- 重要×不急(例:組織の長期的成長施策):どうしても後回しにされがちだが、最も大切な領域。Why型思考でじっくり取り組む必要がある。
- 不要×緊急(例:形骸化した定例会議、慣習的な報告書):What型思考でひとまず処置しつつ、Why型思考で「そもそもこの業務は必要か」を問い直すことが管理職の仕事。ここに手を打たないと、組織は疲弊し続ける。
- 不要×不急(例:ネットサーフィン、業務中の息抜き):緊急でも重要でもないため個人への負担は少ない。仕事における「余白」として適度な息抜きは必要。ただし「不要×緊急」を放置してここから手をつけると、組織はギスギスしていく。
管理職研修でこのマトリクスを使うと、参加者は「自分のチームが今どの象限に時間を使いすぎているか」を客観的に見直すことができます。
ECRSの原則——「不要×緊急」をWhy型思考で削ぎ落とす
管理職研修でECRSの原則が活きるのは、主に「不要×緊急」の象限です。やらされている業務の中に「なぜこれをやっているのか」が不明なものが混ざっていないか——その問いに答えるためのWhy型思考ツールがECRSです。
人は意味のないことをやらされることほど苦痛に感じます。「不要×緊急」が多い組織では、メンバーのモチベーションが低下し、やがて組織全体が疲弊していきます。管理職はWhy型思考でこの象限を積極的に削ぎ落としていく責任があります。
| 優先順位 | 原則 | 問いかけ・ポイント | 例:無駄な会議に適用する |
|---|---|---|---|
| 1位 | E(Eliminate:排除) | そもそもこの業務は必要か? なくせるなら、なくすことが最大のインパクト | この会議、そもそも必要か? 参加者全員の時間を割く価値があるか? → なければ廃止 |
| 2位 | C(Combine:結合) | 複数の業務をまとめられないか? 会議の統合、プロセスの連結など | 週次報告と月次レビューを一本化できないか? 目的が近い会議を統合して回数を減らす |
| 3位 | R(Rearrange:順序変更) | 業務の順番を変えられないか? 手戻りを減らす工程の組み替え | 事前に資料・論点を共有し、会議は意思決定だけに集中できる順番に変える |
| 4位 | S(Simplify:簡素化) | もっとシンプルにできないか? 手順を減らす、標準化するなど | 報告資料をA4一枚に統一、会議時間を60分→30分にルール化して簡素化する |
ECRSはEからSへと優先順位が高い順に並んでいます。ただし、EがWhy型でSがWhat型というわけではありません。ECRSの4つすべてが「この業務の意義を問い直す(Why型)」という観点から実行されるものです。管理職研修でECRSを使う目的は、業務の一つひとつに「なぜやるのか」を問い続ける習慣を組織に根付かせることにあります。
What型指示を受けたとき——管理職に必要な「Whyの逆算力」
管理職研修の参加者からよく出る悩みが「上司からWhat型指示が来たときどうすればよいか」というものです。
この場合に有効なのが、「Whyを逆算する」という考え方です。上司から「新サービスのSNS発信を強化しろ」というWhat型指示が来たとき、管理職として「なぜSNSなのか」「何を達成しようとしているのか」というWHYを自分なりに仮説立て、チームへの伝え方を変えることができます。
トゲなく上司に「なぜ」を聞ける関係を作ることも大切です。管理職研修では、「Whyを聞く力」と「Whyを伝える力」の両方を磨くことが求められます。
まとめ——What型指示を卒業するための3つのアクション
①指示を出す前に「なぜこれが必要か」を自分に問う、②重要度×緊急度マトリクスで業務を仕分けする、③不要×緊急はECRSの順番(排除→結合→順序変更→簡素化)で業務を見直す、④上司からWHAT指示を受けたらWHYを仮説立てチームに伝える——この4つを実践するだけで、管理職研修の学びはチームの日常に変化をもたらします。
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