2E式管理職養成プログラム

「自己基盤力」をベースに

管理職を“罰ゲーム”にしないための、マネジメント再設計。

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「働きやすい会社」なのに若手が辞める理由――管理職研修で埋めるべき「マネジメントの不在」

「うちの職場は、十年前と比べて格段に働きやすくなりました。残業は減り、休暇も取りやすい。上司が部下を怒鳴る光景も、もう見かけません。それなのに――若手が辞めていくんです。退職面談で理由を聞くと、決まってこう言うんですよ。『この会社にいても、成長できない気がするんです』と」

これは、ある会社の人事部長から伺った悩みです。

管理職研修の現場で人事の皆さまとお話ししていると、業種を問わず、ほとんど同じ言葉を耳にします。しかも興味深いことに、この悩みを口にされるのは、働き方改革に真剣に取り組み、労働環境の改善という宿題をきちんと果たしてきた会社の方ばかりなのです。

数字も、この実感を裏付けています。

33.8% 大卒新卒の3年以内離職率。「3年で3割」は今も変わらない(厚生労働省・令和4年3月卒業者)

36% 大手企業の新入社員のうち、自分の職場を「ゆるい」と感じる割合(リクルートワークス研究所)

57.2% 「ゆるい」と感じる新入社員のうち、「すぐにでも」「2〜3年で」辞めたいと考える割合(同上)

働きやすくしたのに、辞めていく。むしろ「ゆるい」ことが、離職の引き金になっている

この一見不可解な現象は、何が原因なのでしょうか。本稿では、「職場の4象限」という一枚の地図と、「マネジメントの不在」という概念で、この問いを読み解いてみたいと思います。

職場の4象限――あなたの会社はどこにいるか

まず、地図を描きましょう。横軸に「成長実感」(ない↔ある)、縦軸に「働きやすさ・公私のバランス」(仕事偏重↔公私バランス)を取ると、職場は四つに分類できます。

職場の4象限の図。縦軸は公私がバランスか仕事偏重か、横軸は成長実感の有無。昭和の「きつい職場」から平成の「やばい職場」、働き方改革を経た現在の「ゆるい職場」、そして働き甲斐改革で目指す「あつい職場」への変遷を示す
職場の4象限と時代の変遷

かつての昭和の職場は、典型的な「きつい職場」でした。長時間労働は当たり前、上司の指導も厳しい。私生活は犠牲になりましたが、仕事を通じて鍛えられている、成長しているという実感は確かにありました。

ところが平成に入ると、様相が変わります。バブル崩壊後の長い停滞の中で、頑張っても報われない。成長実感が失われ、きつさだけが残る「やばい職場」、いわゆるブラック企業の問題が深刻化していきました。四つの象限の中で、最悪の場所です。

「やばい」から「ゆるい」へ――働き方改革という転換点

2010年代、長時間労働やハラスメントを強いるブラック企業は、大きな社会問題となりました。その転換点を象徴するのが、2015年に起きた、電通の新入社員の過労自死です。入社一年目の若い社員が過重な長時間労働の末に自ら命を絶ったこの痛ましい出来事は、社会に大きな衝撃を与え、長時間労働とハラスメントの是正を求める声を一気に高めました。

これを背景に、国を挙げた「働き方改革」が急速に進みます。残業時間の上限規制、ハラスメント防止の法制化、年次有給休暇の取得義務化。人事の皆さまにとっては、まさにこの十年、最前線で取り組んでこられたテーマでしょう。そして職場は、確実に「働きやすく」なりました。

こうして生まれたのが、現在の「ゆるい職場」です。労働政策の研究者である古屋星斗氏は、理不尽な叱責も際限のない残業もなくなった一方で、若手が「ここにいて成長できるのか」という不安を抱える現在の職場を、こう名付けました。冒頭の人事部長の悩みは、まさにこの「ゆるい職場」で起きていることなのです。

ここで注意したいのは、若手は会社への「不満」で辞めているのではない、ということです。彼らが口にするのは、「このままで自分は大丈夫なのか」という「不安」です。不満なら、待遇や制度の改善で応えられます。しかし不安は、働きやすさをいくら積み増しても解消されません。むしろ職場が快適であるほど、「ぬるま湯にいる自分」への焦りは強まっていく。ここに、従来型の福利厚生・制度改善アプローチの限界があります。

働きやすさが犯人ではない――「マネジメントの不在」という真因

ここで強調したいのは、働きやすさそのものが悪いわけではない、ということです。働きやすさは、社会が大きな代償を払って手に入れた、後戻りさせてはならない前進です。

では、なぜ「ゆるい職場」では成長実感が生まれないのか。私たちはその真因を、「マネジメントの不在」と捉えています。順を追って説明しましょう。

振り返れば、昭和の「きつい職場」を支えていたのは、統制型のマネジメントでした。高い目標を課し、達成すれば報酬で報い、達成できなければ厳しく叱る。アメとムチ、つまり外発的な動機づけによって人を「動かす」やり方です。良し悪しは別として、当時はこのやり方が確かに機能していました。

ところが働き方改革によって、この統制型マネジメントは社会的に否定されました。強い叱責はハラスメントとなり、長時間の負荷をかけることは許されなくなった。人を外から「動かす」ための手段が、次々と使えなくなったのです。

問題は、その先です。統制型に代わる新しいマネジメントのやり方が、いまだ確立されていない。その結果、多くの職場で起きているのが、統制もできず、かといって導くこともできず、結果として放任になっている状態――「マネジメントの不在」です。

マネジメントスタイルの変遷を示す比較表。過去の統制型マネジメント(部下を動かす・正解を与える・アメとムチ・優越感)、現在のマネジメントの不在(放任や抱え込み・どっちつかず・動機付け無し・罰ゲーム)、これからの内発型マネジメント(部下が動く・問いを共に考える・自己決定・自己実現の場)を5つの観点で比較
マネジメントスタイルの変遷

厳しい要求がハラスメントにならないかと恐れ、当たり障りのない仕事しか任せない。率直なフィードバックを避け、本人のためになる指摘を飲み込んでしまう。「最近の若い人には言っても仕方ない」と、関わること自体を諦めてしまう。こんな上司の姿に、心当たりはないでしょうか。

部下の側から見れば、負荷がかからない代わりに、鍛えられもしない。「ゆるい職場」で若手の成長実感が失われている本当の原因は、働きやすさではなく、この「マネジメントの不在」にあるのです。

管理職を責めても、何も解決しない

ここで、人事の皆さまにこそお伝えしたい視点があります。それは、この問題を「管理職個人の力量不足」として処理してはいけない、ということです。

いま現場で起きていることを正確に言えば、こうなります。会社と社会は、管理職から統制型という「使い慣れたOS」を取り上げた。しかし、それに代わる新しいOSは、まだ誰もインストールしてくれていない。それでいて、成果への責任だけは従来のまま残っている――。

管理職は、決して怠けているわけではありません。むしろ真面目な人ほど、「動かす」手段を失ったまま、部下との間で立ち尽くしているのです。これは個人の資質の問題ではなく、時代の転換期に必然的に生じている構造の問題です。

そして、この構造を放置することのコストは、若手の離職だけにとどまりません。日本能率協会マネジメントセンターの調査では、「管理職になりたくない」と答える一般社員は77.3%に達し、管理職が「罰ゲーム」と呼ばれる状況さえ生まれています。板挟みで疲弊する上司の姿を間近で見ている若手が、その役割に魅力を感じるはずがありません。若手の離職と、管理職候補の枯渇。人事にとってこの二つは、別々の問題ではなく、同じ「マネジメントの不在」から流れ出ている問題なのです。

目指すのは「あつい職場」――「動かす」から「動き出す」へ

では、どこへ向かえばよいのでしょうか。

目指すべきは、4象限の右上、働きやすさを保ったまま成長実感を取り戻す「あつい職場」です。そのために必要なのが、統制型に代わる新しい時代のマネジメントです。

それは、アメとムチで人を「動かす」マネジメントではありません。
一人ひとりが、自らのありたい姿に向かって「動き出す」状態をデザインする。
内発的な動機づけを起点とする、いわば内発型のマネジメントです。

ここで、誤解を一つ先回りしておきます。「動き出す状態をデザインする」とは、部下に任せて見守ることではありません。それは「デザイン」ではなく「放任」、つまり「マネジメントの不在」そのものです。

一人ひとりの「ありたい姿」を対話を通じて引き出す。それを組織の目的と重ね合わせる。安心して挑戦できる場と、成長につながる適切な負荷を設計する。これらは、アメとムチで人を動かすことよりも、はるかに高度な技術です。管理職の役割は、軽くなるのではなく、「指示し、教える人」から「人が動き出す場をつくる人」へと、確実に格上げされているのです。

人事にできること――精神論ではなく「技術」として渡す管理職研修へ

だからこそ、人事の打ち手は明確です。管理職に「もっと部下と向き合え」と精神論を説くことではなく、内発型マネジメントを学べる機会を、技術として渡すことです。

このことは、制度導入の順番にも示唆を与えてくれます。たとえば近年、多くの会社が1on1ミーティングを導入しましたが、「形骸化している」「ただの進捗確認になっている」という声をよく伺います。当然です。担い手である上司のマネジメント観が統制型のまま、あるいは「不在」のままで器だけを用意しても、中身は変わりません。制度より先に、担い手のOSを入れ替える必要があるのです。

高度な技術である以上、それを支える力が要ります。私たちはそれを、自分自身の軸を固める「自己基盤力」、組織のありたい姿を描き道筋を設計する「課題解決力」、一人ひとりとチームが動き出す場をつくる「他者影響力」という三つの力に集約しています。エンゲージメントサーベイで現状を測ることはできても、数字を動かすのは、結局のところ現場のマネジメントです。その担い手に新しいOSを渡すことこそ、「ゆるい職場」を「あつい職場」に変える、最も確実な投資だと私たちは考えています。

管理職が罰ゲームではなく、誇りある仕事として選ばれる会社へ。その転換は、人事から始められます。

株式会社2E Consultingでは、この三つの力を体系的に育てる管理職養成プログラムを提供しています。「マネジメントの不在」に心当たりのある人事・経営者の方は、お気軽にお問い合わせください。

参考データ:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」/リクルートワークス研究所「大手企業における若手育成状況調査」(古屋星斗『ゆるい職場――若者の不安の知られざる理由』中公新書ラクレ、2022年)/日本能率協会マネジメントセンター調べ(日経ビジネス「管理職罰ゲーム」関連報道より)

Tetsuro

Tetsuro

株式会社 2E Consulting 代表。中小企業診断士。アメリカ合衆国ニューヨーク州出身。一橋大学社会学部卒。三菱商事にて製鉄用石炭・鉄鉱石のトレーディング・事業開発・投資事業に携わり、インド・ドイツ・シンガポールに9年間駐在。海外駐在において現地人材の育成・組織開発に携わる中で人材育成に興味を持ち、企業向け研修会社に転職、年間2,000人の受講生にビジネススキルを教える。Harvard Business School Program for Leadership Development 修了(2019年)。その後、独立し、中小企業診断士として数多くの企業経営の現場で経営改善に従事している。

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