2E式管理職養成プログラム

「自己基盤力」をベースに

管理職を“罰ゲーム”にしないための、マネジメント再設計。

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【管理職研修】「管理職は罰ゲーム」の正体――プレイングマネージャーを消耗させる4つの衝突

ある日の、課長の独白

午後7時。会議室を出た田中課長(仮名)のノートには、今日こなした「自分の仕事」が一行も進んでいない。午前は部下の商談に同行し、午後は別の部下の1on1、その合間にトラブル対応とメール返信。気づけば、自分が担当する大口顧客への提案書は、まだ白紙のままだ。

「結局、自分の仕事は夜からか」――そうつぶやいて、彼はもう一度パソコンを開く。プレーヤーとしての数字も、マネージャーとしてのチーム運営も、どちらも落とせない。どちらも中途半端にできない。そして、どちらをやっても「もっとできたはず」という感覚だけが残る。

これは特定の誰かの話ではありません。いま、日本の中間管理職の多くが、この二重の重荷を一人で背負っています。そして静かに、こう思い始めている――「管理職になんて、ならなければよかった」と。

「管理職になりたくない」は、もう個人の弱気ではない

かつて昇進は、報酬であり、誇りでした。いまはどうでしょうか。

各種の調査では、一般社員の多くが「管理職になりたくない」と答え、その理由の上位に「責任が増える」「負担に見合わない」「自分の時間がなくなる」が並びます。すでに管理職になった人に聞いても、「プレーヤー業務と管理業務の両立がつらい」という声が後を絶ちません。

注目すべきは、これが個人の気質や根性の問題ではなくなっているという点です。プレイングマネージャー化はいまや例外ではなく、標準装備になりました。人手不足で現場の頭数が足りない。働き方改革で部下の残業はさせられない。その結果、あふれた仕事が「一番責任感のある人」、つまり管理職のところへ流れ込む。

個人が弱くなったのではありません。構造が、管理職に二人分の役割を要求するようになったのです。だからこそ、「気合いで乗り切れ」という処方箋は、もう効きません。

罰ゲームの正体は「二重役割」という構造

「管理職は罰ゲーム」という言葉が、自嘲とともに広がっています。けれど、これを「弱音」として片づけてはいけません。罰ゲームと感じる感覚の奥には、はっきりとした構造があります。

それは、一人の人間の中で、性質のまったく異なる二つの役割が、同時に、無制限に走り続けているという状態です。

プレーヤーとしての自分は「自分の成果」を出す。マネージャーとしての自分は「他者を通じて成果を出す」。この二つは、足し算で並ぶのではありません。時間を奪い合い、頭の使い方を奪い合い、評価軸を奪い合う。罰ゲームの苦しさは、仕事量の多さそのものより、この二つが衝突し続けることの消耗にあります。

ならば、まずやるべきは精神論ではなく、役割の分解です。何と何が、どこでぶつかっているのかを、見える形にする。

二つの役割は、4つの次元で衝突する

プレーヤーとマネージャーの衝突を、4つの次元に分けて見てみます。

1時間の奪い合い

プレーヤー業務は締め切りがあり、緊急で、目に見えます。マネジメントは緊急ではないが重要で、成果が見えにくい。人は緊急なものを優先するため、放っておくとマネジメントは常に後回しになり、夜や週末に押し込まれます。

2評価軸の奪い合い

プレーヤーは「自分の数字」で評価され、マネージャーは「チームの成果」で評価される。短期では自分で動いたほうが速く確実です。だから無意識に、評価されやすい自分の数字に手が伸び、部下育成という遅効性の投資が削られます。

3思考のOSの奪い合い

プレーヤーの脳は「自分がどう動くか」で動きます。マネージャーの脳は「他者がどう動き出すか」で動きます。この二つは、まったく別のOSです。プレーヤーのまま管理職になった人は、つい自分で答えを出し、自分で動いてしまう。それが部下の成長機会を奪い、結局また自分に仕事が戻ってくる悪循環を生みます。

4責任の重さの奪い合い

自分のミスは自分で取り返せます。しかし部下のミス、チームの未達、メンバーの離職――これらは自分一人ではコントロールしきれないのに、責任だけは管理職に乗る。コントロールできないものへの責任こそが、最も人を疲弊させます。

罰ゲームの正体は、この4つが同時進行していることです。逆に言えば、どこで衝突しているかが分かれば、手の打ちようがあるということでもあります。

「兼任をやめろ」では解決しない

では、プレーヤー業務をゼロにすればいいのか。現実には、それはできません。人員にも余裕はなく、現場感覚を失った管理職もまた機能しません。問題は「兼任していること」そのものではなく、二つの役割が無制限・無設計のまま放置されていることです。

必要なのは、根性でも自己犠牲でもなく、分解と設計です。

第一に、役割の配分を意図的に決めること

「自分の数字に使う時間」と「チームに使う時間」を、感覚ではなくカレンダー上で線引きする。マネジメントを「空いた時間にやるもの」から「先に確保するもの」へ変える。

第二に、思考のOSを切り替えること

自分で答えを出す前に、「これは自分がやるべきか、部下が育つ機会か」を一拍おいて問う。私たちが管理職研修で繰り返し伝えるのは、マネジメントの本質が「人を動かす」ことではなく、「人が動き出す」状態をつくることだ、という一点です。自分が走る量を減らし、チームが走り出す設計に頭を使う。これがプレーヤーからの本当の卒業です。

第三に、手放すこと

すべてを自分で抱える管理職は、有能に見えて、実はチームの成長を止めています。「自分がいなくても回るチーム」をつくることこそ、管理職にしかできない最大の成果です。

管理職を、個人の頑張りに依存させない

ここで強調したいのは、これらを管理職個人の努力だけに委ねてはいけないということです。

罰ゲームが構造の問題である以上、解決もまた構造で行う必要があります。会社が役割期待を曖昧にしたまま「あとは現場で」と丸投げすれば、どれだけ優秀な人でも遅かれ早かれ潰れます。管理職を「経営の一翼を担う経営職」として扱い、その役割を明確に定義し、プレーヤー業務の量を組織として調整し、評価でマネジメント行動を正当に報いる――ここまでやって初めて、個人の工夫が活きます。

そしてその土台にあるのが、私たちが一貫して重視する自己基盤力です。二重役割の重圧の中で、自分を見失わず、自分のあり方(Being)を保てること。これは「強い管理職」になることではなく、「折れない管理職」になるということです。

おわりに――罰ゲームを、役割に変える

管理職は、罰ゲームではありません。罰ゲームに見えてしまうのは、二つの役割が分解されず、設計されず、個人の根性に押し付けられているからです。

衝突している次元を見える化し、役割を意図的に配分し、思考のOSを切り替え、そして組織がそれを支える。この四つが揃ったとき、管理職は「耐える役」から、チームを勝たせ、自らも成長する役へと変わります。

あなたの会社の管理職は、いま、どの次元で消耗しているでしょうか。
その問いから、罰ゲームを役割に変える一歩が始まります。

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Tetsuro

Tetsuro

株式会社 2E Consulting 代表。中小企業診断士。アメリカ合衆国ニューヨーク州出身。一橋大学社会学部卒。三菱商事にて製鉄用石炭・鉄鉱石のトレーディング・事業開発・投資事業に携わり、インド・ドイツ・シンガポールに9年間駐在。海外駐在において現地人材の育成・組織開発に携わる中で人材育成に興味を持ち、企業向け研修会社に転職、年間2,000人の受講生にビジネススキルを教える。Harvard Business School Program for Leadership Development 修了(2019年)。その後、独立し、中小企業診断士として数多くの企業経営の現場で経営改善に従事している。

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