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管理職研修で描く「ありたい姿」|Will・Can・Mustを「ノルマ」にさせない思考法

管理職研修ありたい姿Will Must Can

「課題」とは、「ありたい姿」と「現状」のギャップから生まれるものです。では、その「ありたい姿」をどう描けばよいのでしょうか。管理職研修では、Will(やりたい)・Can(できる)・Must(やるべき)という3つの観点から「ありたい姿」を明確にするフレームワークを活用しています。本記事では、この3要素の本質的な意味と、管理職が陥りがちな「ノルマの罠」を突破する方法を解説します。

「ありたい姿」を描かずして、真の課題設定はできない

研修で繰り返しお伝えしている原則があります。それは、「課題を設定するには、まず『ありたい姿』を具体化しなければならない」ということです。

「ありたい姿」が曖昧なままでは、抽出される課題も、そこへの行動もすべて曖昧になります。しかし、現場の管理職からは「日々の業務に追われ、先のことは考えられない」「状況変化が激しすぎて将来像が見えない」という声も多く聞かれます。

だからこそ、方法論として「ありたい姿を描く技術」を学ぶ必要があります。ゴールが鮮明になれば、自ずと「何が足りないか(課題)」が浮き彫りになり、優先順位(行動)も自然と決まってくるからです。

Will・Can・Mustの本質と「コンフォートゾーン」の転移

Will・Can・Mustは目標設定の定番フレームワークですが、その「真の効能」は意外と知られていません。このフレームワークの肝は、「コンフォートゾーン(快適な空間)を未来に移すこと」にあります。

人間は本来、現状を維持しようとする生存本能(ホメオスタシス)を持っています。三日坊主で終わってしまうのは、脳が「現状」をコンフォートゾーンだと認識し、そこから出ようとする変化を拒むからです。

これを打破するには、「ありたい姿」を脳に「今の自分にとって当たり前の姿」だと思い込ませる必要があります。そのための3要素が、Will・Can・Mustです。

  1. Will: 心からワクワクすること
  2. Can: 自分らしさ(強み)を発揮できること
  3. Must: 他者や社会から求められていること

この3要素が重なったとき、脳にとってのコンフォートゾーンが「未来の姿」へと移行します。すると、無理に頑張らなくても、脳が勝手に「現状とのズレ」を解消しようと指令を出し、自然に行動が加速するのです。

Will・CanなきMustは、かつての「ノルマ」に成り下がる

「〜ねばならない」という義務感で動くのか、「周囲に期待されている」という使命感で動くのか。前者は「ノルマ」であり、後者は「ゴール」です。

この「ノルマ」という言葉、実はロシア語に由来します。終戦直後、シベリアの強制収容所(ラーゲリ)に抑留された日本の方々が、極寒と飢えの中で課せられたあまりにも過酷な割当労働。それが「ノルマ」でした。

日本人が、命を落とすほどの極限状態で強制的に働かされ、その苦しみとともに日本へ持ち帰った言葉が、この「ノルマ」という響きには刻まれています。日本人として、この歴史的な痛みと背景を忘れてはならないと感じます。

Will(やりたい)もCan(強みの発揮)も無視され、ただ「生き延びるために、達成しなければならない数字」として押し付けられるMustは、現代のビジネスにおいても人を疲弊させ、心を摩耗させるだけの「ノルマ」でしかありません。

逆に、自分の内なる願い(Will)と、持ち前の武器(Can)が活かされる場所であれば、周囲からの要請(Must)は、自分を奮い立たせる最高のガソリン——すなわち「ゴール」へと昇華されるのです。

💡 著者(山本)の視点

現在の私は、Will(管理職から日本を元気にしたい)を持ち、Can(体系化して伝えるスキル)を発揮しているからこそ、Must(管理職を「罰ゲーム」から救ってほしいという期待)に全力で取り組めています。会社員時代より長時間働いていますが、「働きすぎて辛い」と感じたことは一度もありません。

Will・Must・Canの3つの観点

改めて、3つの要素を整理しておきましょう。管理職研修ではこのフレームを個人にも組織にも応用できます。

Will ── やりたいこと

自分や組織が本当に望んでいること。情熱やモチベーションの源泉。

Can ── できること

自分や組織が持っている強み・スキル・リソース。実現可能性の基盤。

Must ── やるべきこと

市場・顧客・社会から求められること。避けられない使命や義務。

✦ Will・Can・Mustの3つが重なる領域こそが、新たなコンフォートゾーンとなる「ありたい姿」
Will・Can・Mustの3つの円が重なる「ありたい姿」のフレームワーク図

▲ Will(やりたい)・Can(できる)・Must(やるべき)の3つが重なる交点が「ありたい姿」

3つの円が重なる部分——「やりたい × できる × やるべき」の交点——が、最も実現可能性が高く、かつ意味のある「ありたい姿」となります。管理職研修ではこの3つの観点から「ありたい姿」を問い直す時間を取ることで、参加者が自分自身のビジョンを明確化できます。

個人と組織の「ありたい姿」を統合する

管理職にとって重要なのは、「個人のWill・Can・Must」と「組織のWill・Can・Must」をすり合わせることです。

自分の情熱(Will)が乗らない領域で課題を設定してもモチベーションは続きません。一方で、組織の要請(Must)を無視すれば、それは単なる独りよがりになります。

  • Will(情熱): チームをどうしたいか?
  • Can(強み): 自組織の勝ちパターンは何か?
  • Must(使命): 会社や市場から何を期待されているか?

この重なりを言語化できる管理職は、メンバーに対しても「なぜこの仕事が必要なのか」というWhyを力強く語ることができます。

まとめ:今日、「3年後の姿」を1枚の紙に書き出す

「ありたい姿」の言語化に、完璧さは必要ありません。まずはノートに、Will・Can・Mustの3つの円を描いてみてください。

「ありたい姿」と「現状」のギャップが可視化された瞬間、組織の停滞は終わり、課題解決に向けたダイナミックな動きが始まります。管理職研修での学びは、その最初の一歩となる「1枚の紙」から始まります。

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Tetsuro

Tetsuro

株式会社 2E Consulting 代表。中小企業診断士。アメリカ合衆国ニューヨーク州出身。一橋大学社会学部卒。三菱商事にて製鉄用石炭・鉄鉱石のトレーディング・事業開発・投資事業に携わり、インド・ドイツ・シンガポールに9年間駐在。海外駐在において現地人材の育成・組織開発に携わる中で人材育成に興味を持ち、企業向け研修会社に転職、年間2,000人の受講生にビジネススキルを教える。Harvard Business School Program for Leadership Development 修了(2019年)。その後、独立し、中小企業診断士として数多くの企業経営の現場で経営改善に従事している。

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