2E式管理職養成プログラム

「自己基盤力」をベースに

管理職を“罰ゲーム”にしないための、マネジメント再設計。

お問い合わせ

ご質問、ご相談、お気軽にお寄せください。

【管理職研修】「強い管理職」より「折れない管理職」――セルフケアという、見過ごされた職務

誰もケアしてくれない人

部下のメンタル不調にいち早く気づき、声をかけ、面談を設定する。1on1では部下の話に耳を傾け、悩みを受け止める。チームの雰囲気に気を配り、誰かが沈んでいればフォローする――鈴木課長(仮名)は、いわゆる「いい上司」だ。

けれど、その鈴木課長自身が今、眠れていないことを、誰も知らない。部下のケアは教わった。研修も受けた。けれど、自分自身をケアする方法は、誰からも教わっていない。そして彼は、こう思い込んでいる。「管理職が弱音を吐くわけにはいかない」と。

このシリーズでは、管理職の「罰ゲーム化」を二重役割の衝突として分解し、その処方箋として「権限移譲=手放すこと」を扱ってきました。今回はもう一歩、管理職自身の内側に踏み込みます。テーマは、管理職のセルフケアです。

ケアは「部下向け」ばかりで、「自分向け」がない

ラインケアという言葉があります。管理職が、部下のメンタルヘルスに配慮する役割のことです。多くの企業がこれを研修で教え、管理職に求めます。

それ自体は正しい。けれど、ここには大きな抜け落ちがあります。ケアする側である管理職自身のケアが、どこにも設計されていないのです。

考えてみれば奇妙な話です。部下の不調には気づけと言われ、チームの心理的安全性には責任を持てと言われる。感情の受け皿になることを期待されながら、その受け皿自身が満杯になったとき、誰がそれを空にするのか――その問いに、組織はほとんど答えを用意していません。

結果として、管理職は「ケアする人」であり続け、「ケアされる人」にはなれないまま、いつのまにかすり減っていきます。

なぜ、管理職こそ折れやすいのか

管理職が抱えるストレスには、プレーヤー時代にはなかった、固有の性質があります。四つに分けて見てみます。

1コントロールできない責任

自分の仕事は自分の努力で何とかなります。けれど、部下の成果、チームの未達、メンバーの離職は、自分一人ではコントロールしきれない。コントロールできないものへの責任は、人を最も消耗させます。

2感情労働

苛立っていても穏やかに振る舞い、不安でも前向きに見せる。管理職は常に「感情を管理する」ことを求められます。この感情の演技は、目に見えない疲労を確実に蓄積させます。

3孤独

部下には弱音を吐けない。上には成果を求められる。同僚は競争相手にもなる。愚痴を言える相手がいないまま、判断の重圧を一人で引き受ける。管理職の孤独は、構造的なものです。

4弱音を許さない自己像

「管理職たるもの、弱音を吐くべきではない」という思い込み。これが助けを求めることを妨げ、不調のサインを自分で握りつぶしてしまう。最も危険なのは、この「強くあらねば」という鎧です。

「強い」と「折れない」は、違う

ここで言葉を一つ、はっきり分けておきたいと思います。「強い管理職」と「折れない管理職」は、同じではありません。

✕ 強い管理職――硬い鎧

弱さを見せず、すべてを引き受け、感情を押し殺して走り続ける。その「強さ」は、しばしば限界まで我慢して、ある日突然ポキリと折れます。鎧は硬いほど、割れたときの壊れ方が激しい。

○ 折れない管理職――しなやかな芯

強がる人ではありません。自分の状態に気づき、無理なときは無理だと言え、必要なときには助けを求められる人。しなやかに、揺れながら、戻ってこられる人。これがレジリエンスの本質です。

目指すべきは、硬い鎧ではなく、しなやかな芯です。そしてその芯こそ、私たちが管理職研修の土台に置く自己基盤力そのものです。

自己基盤力を、自分自身に向ける

私たちはこれまで、自己基盤力を「部下を動かす土台」として語ってきました。けれど自己基盤力は本来、まず自分自身を支えるための力です。それを、四つの実践として自分に向けてみます。

第一に、自分の状態をモニタリングする

部下の不調には気づくのに、自分の不調には鈍感――これが管理職の典型です。眠れているか、食べられているか、笑えているか。部下に向けるのと同じ観察の目を、自分にも向ける。気づくことが、すべての出発点です。

第二に、「事実」と「反応」を切り分ける

起きた出来事そのものと、それに対する自分の解釈・感情は別のものです。書評でも取り上げた『反応しない練習』が説くように、心がざわついたとき、「いま自分は反応しているな」と一歩引いて眺めるだけで、消耗は大きく減ります。出来事は変えられなくても、反応との距離は取れる。

第三に、助けを求める力を持つ

助けを求めることは、弱さではなく、スキルです。上司に相談する、同じ立場の仲間と話す、専門家を頼る――抱え込まないことは、無責任ではなく、むしろ責任ある行動です。一人で抱えて倒れることのほうが、チームへの責任を果たせません。

第四に、境界線を引く

すべての時間を仕事とチームに明け渡せば、いずれ枯れます。仕事を離れる時間、自分のための時間を、意図的に確保する。これは怠けではなく、走り続けるための補給です。

セルフケアは、わがままではなく、職務である

ここを誤解してほしくありません。セルフケアは、自分を甘やかすことでも、責任から逃げることでもありません。

管理職が倒れれば、チームは止まります。判断は滞り、部下は路頭に迷い、これまで積み上げた信頼関係も揺らぎます。つまり、管理職が自分を健全に保つことは、チームへの責任を果たすための、立派な職務の一部なのです。

飛行機の安全説明を思い出してください。「酸素マスクは、まずご自身に装着してから、お子様を手伝ってください」。自分が酸素を確保していなければ、誰かを助けることはできません。管理職のセルフケアは、これと同じです。自分を保つことが、人を支える前提なのです。

おわりに――まず、自分の状態に気づくことから

「強い管理職」を目指して鎧を重ねるほど、人は折れやすくなります。本当に強いのは、自分の弱さに気づき、しなやかに戻ってこられる「折れない管理職」です。

罰ゲームの重圧の中で、権限を手放してチームを育てながら、それでも自分を見失わずにいられること。その土台が自己基盤力であり、それは部下のためだけでなく、何よりあなた自身のためにあります。

部下の不調には、あれほど早く気づくあなたへ。最後に一つだけ問います。
今のあなた自身は、大丈夫ですか。
その問いに正直に向き合うことが、折れない管理職への第一歩です。

\ まずは現状を見える化 /

無料マネジメント診断

あなたのチームは、そしてあなた自身は、いま健全に走れているでしょうか。
2E式マネジメント診断で、組織の現在地を無料でチェックできます。

無料で診断してみる →
Tetsuro

Tetsuro

株式会社 2E Consulting 代表。中小企業診断士。アメリカ合衆国ニューヨーク州出身。一橋大学社会学部卒。三菱商事にて製鉄用石炭・鉄鉱石のトレーディング・事業開発・投資事業に携わり、インド・ドイツ・シンガポールに9年間駐在。海外駐在において現地人材の育成・組織開発に携わる中で人材育成に興味を持ち、企業向け研修会社に転職、年間2,000人の受講生にビジネススキルを教える。Harvard Business School Program for Leadership Development 修了(2019年)。その後、独立し、中小企業診断士として数多くの企業経営の現場で経営改善に従事している。

マネジメントの「癖」を可視化する無料診断とは?

5つの視点(マネジメント観/自己基盤力/課題解決力/1on1対話力/組織対話力)から、現在のスタイルを243通りで判定。あなたの強みと、明日から取り組めるNext Actionが、レポートで届きます。

30問・10分の無料診断で、あなたのマネジメントの「癖」を可視化。

サンプルレポートを見てみる

コメント

この記事へのコメントはありません。

おすすめ記事

PAGE TOP