2E式管理職養成プログラム

「自己基盤力」をベースに

管理職を“罰ゲーム”にしないための、マネジメント再設計。

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「他責」か「自責」かではない――管理職が知るべき“責任=反応する能力”という視点

「他責」か「自責」かではない――管理職が知るべき“責任=反応する能力”という視点

これまでのキャリアの中で、一度は「他責にするな」「自責で考えろ」と指導を受けたことがあるのではないでしょうか。そして今度はご自身が、部下や後輩へ同じ言葉をかけた経験のある方も、少なくないと思います。

一般に「他責とは他人のせいにすることで、よくないこと」「自責とは自分事として捉えることで、よいこと」と理解されています。

しかし私は、この「他責=悪い」「自責=良い」という単純な図式に、長く違和感を持ってきました。

問題は「他責か、自責か」ではない。「責」をどう捉えるかではないか——というのが、私の考えです。

「責」を「責める(blame)」と捉えると

「責」を「責める」、英語で言えば blame と捉えてみます。

他責とは「他人を責める」こと。たとえば遅刻して上司に叱られたとき、口では「申し訳ございません」と謝りながら、心の中では「そもそも、あなたの指示が分かりにくかったからだ」と上司を責めている。典型的な他責です。

では「自責」、つまり「自分を責める」はどうでしょうか。「自分はなんてバカなことをしたんだ」「どうしようもない人間だ」と自分を責め立てる。

実は、この二つはどちらも「防衛反応」です。

他責は「相手のせいだ、自分は悪くない」という防衛反応。そして自責もまた、「自分は能力が低い、だから仕方ない」と、ある意味で自らのミスを正当化する防衛反応なのです。

blame——責めることが生む防衛反応に共通する特徴を一言で言えば、「現状維持」です。

人は変わりたくない生き物です。変わることは大変だから、無意識のうちに「変わらなくてよい理由」を探している。責めるという意味での他責も自責も、その実、現状維持を正当化するための言い訳になってしまうのです。

この「責めることで生まれる反応」をどう手放すかについては、書評『反応しない練習』──自己基盤力の原点でも掘り下げています。

「責」を「責任(responsibility)」と捉えると

では、「責」を「責任」と捉えるとどうでしょう。

責任は英語で responsibility。これは response(反応)+ ability(能力)、すなわち「反応する能力」です。

RESPONSIBILITY

すでに起きてしまった過去を前提として、その上でより良い反応をする能力——それが responsibility です。

遅刻して上司に叱られた。そのときに上司を責めるのでも、自分を責めるのでもなく、「遅刻した」という過去を前提に、「では次回、時間通りに到着するにはどうすればよいか」を考える。これが本当の意味での自責です。

他責とは「他人の責任」。他人がどう反応するかは、本来こちらがコントロールできることではありません。だからこそ自責と他責を切り分け、「自分の責任の範囲で、どう反応すればより良い成果につながるか」を考えればよいのです。

この「自分と他者の責任を切り分ける」という発想は、アドラー心理学の「課題の分離」とも重なります。詳しくは書評『嫌われる勇気』が管理職研修に効く理由をご覧ください。

ある記者会見が、私に問いを残した

この自責と他責について、深く考えさせられた出来事があります。

二十数年前、日本で初めて鳥インフルエンザが流行したときのことです。京都のある養鶏業者が、陽性反応の出た鶏を行政に報告せず隠していたことが、感染拡大のきっかけの一つとなりました。

陽性反応が出れば報告する義務がある。それを怠った以上、行政処分は当然であり、隠蔽が許されるものではありません。世間とマスコミから厳しく糾弾されたその社長と奥様は、記者会見を開きました。とても人の好さそうな老夫婦でした。

当時学生だった私は、その会見をワイドショーで見ていました。誠実な会見でした。まず率直に謝罪し、なぜ報告できなかったのか、その心理的な葛藤を正直に語ってくれたのです。

「これまでも風邪をひく鶏はいました。今回、確かに陽性の症状は出ていた。でも、ただの風邪かもしれない。もし報告して世間に知れ渡れば、たとえ検査の結果が陰性であっても、風評被害で親から受け継いだこの会社を潰してしまうかもしれない。神に祈る思いで『どうか陽性でありませんように』と願っていた」——正確な言葉は忘れましたが、おおよそそのような趣旨でした。

正論を言うのは簡単です。報告すべきだった。それは間違いない。けれど、もし自分が同じ立場だったら、倒産のリスクを負ってでも正論通りに報告できただろうか。そう自問したとき、正直、自信がありませんでした。

なぜ私が、二十数年も前の、しかもブラウン管の中の出来事をいまだに覚えているのか。

それは——あれほど大々的に報じられていたのに、翌朝の朝刊のごく小さな囲み記事で、そのご夫婦が遺書を残して自ら命を絶たれたことを知ったからです。

彼らのしたことは、決して褒められることではありません。報告義務を怠った責任は、現実として問われるべきものでした。けれど、世間とマスコミから「お前たちのせいだ」と blame の他責で責められ続けた結果、彼らもまた「私たちはどうしようもない、命でしか償えない」と、blame の自責で自らを追い詰めてしまった。

もし世間が、マスコミが、その葛藤を踏まえたうえで「同じことを二度と起こさないために、仕組みとして何が必要か」を議論できていたら。そして当の経営者も、起きてしまったことを受け止めたうえで「では、より良い反応をするにはどうすればよいか」を考えるマインドを持てていたら。結果は違っていたかもしれません。

blame の強さは、強みにも、足かせにもなる

日本という社会は、とかく blame の力が強い。それが自らを律する倫理観や道徳観となり、日本人の真面目さや誠実さという強みを支えている側面は、確かにあります。

ルールや報告義務は守られなければならない。違反には相応の責任が伴う。それは大前提です。問題は、責めることそのものではなく、責めて終わってしまうことです。blame が強すぎるあまり、「では、どうすれば二度と起こさずに済むか」という建設的な対話や提案が生まれにくくなっているとしたら——それは社会にとっても、組織にとっても、大きな損失ではないでしょうか。


管理職を「罰ゲーム」にしないために

いま、多くの管理職が日々のプレッシャーに押しつぶされそうになっています。その過程で、失敗することもあるでしょう。なぜ管理職がこれほど消耗するのか——その構造は「管理職は罰ゲーム」の正体――プレイングマネージャーを消耗させる4つの衝突で詳しく解説しています。

そのたびに blame で自分を責めるのではなく、マネジメントの目的である「長期的成果の最大化」に立ち返り、失敗を受け止めたうえで「では、どうすればよいか」を考える。

部下が失敗したときも同じです。「なぜできないんだ」と責めるのではなく、起きたことを受け止めたうえで、「では、どうすればより良い結果が得られるだろうか」を一緒に考える。こうした関わり方については、管理職研修で伝えたい「支援型マネジメント」でも具体的に触れています。

CONCLUSION

こうした responsibility——「反応する能力」のマインドを持てたとき、管理職という仕事は、はじめて「罰ゲーム」ではなくなるのではないでしょうか。

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Tetsuro

Tetsuro

株式会社 2E Consulting 代表。中小企業診断士。アメリカ合衆国ニューヨーク州出身。一橋大学社会学部卒。三菱商事にて製鉄用石炭・鉄鉱石のトレーディング・事業開発・投資事業に携わり、インド・ドイツ・シンガポールに9年間駐在。海外駐在において現地人材の育成・組織開発に携わる中で人材育成に興味を持ち、企業向け研修会社に転職、年間2,000人の受講生にビジネススキルを教える。Harvard Business School Program for Leadership Development 修了(2019年)。その後、独立し、中小企業診断士として数多くの企業経営の現場で経営改善に従事している。

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